(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「アンドゥ家の一夜」さいたまゴールド・シアター第3回公演

世界でもっとも人生経験が豊富な役者たちが集うさいたまゴールド・シアター。蜷川さん率いるSGTの存在は大いに気になっていたけど、ホームグラウンドの彩の国芸術劇場は、家からちょっと遠い。でも、ケラが新作を書き下ろすとあれば、そうそう尻込みばかりしているわけにもいかず。
(以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意を!)

彼らが50年ぶりの再会を果たしたのは、学生時代の恩師、安藤の危篤の報せを受け取ったからだ。そこはポルトガルに建つ安藤先生の豪邸。隣家の老夫婦は「アンドウ」が発音しにくいのか、「アンドゥ」と呼ぶ。やがて「最期の瞬間」に立ち合うべく集まる、アンドゥの人生を彩ったたくさんの人々。あたかも全員が揃うのを待つかのように続く、アンドゥの小康状態――――
人生の終焉を目前にした男と、彼をとりまく人々を独自の視点で見つめ、この世の不条理と、人間の愚かさ、逞しさをユーモラスに描く、ケラリーノ・サンドロヴィッチ渾身のブラック・ファンタジィ。 (劇団HPよりあらすじを転載)

これは、素晴らしいですね。もしかしたら、ケラの新たな代表作になるんじゃなかろうか。一日足らずの時間の流れの中に、四十二人に及ぶ登場人物たちの人生が凝縮されている印象。役者たちの芝居は、必ずしも全体レベルが高いとはいえないが、そこはかとない滋味があって、ときに愛らしさすら感じられる。技や芸といったスキルではなく、その役者が人として持っている魅力を十分に引き出している脚本と演出だと思う。
聞くところによれば、本があがったのは開幕2日前だったとか。役者の皆さんは、さぞかし地獄を味わったことと思うが、そんな稽古期間の短ささえも、演者の素の魅力を引き出すなど、プラスに作用しているようにも思える。将来、ナイロンの役者たちによってなされるであろう再演も楽しみだが、SGTによる印象深い舞台は末長く記憶に留まると思う。(休憩20分を含む210分)※7月1日まで。

■データ
初めてお邪魔する素晴らしい仕様にもびっくりのマチネ/彩の国芸術劇場小ホール
6・18〜7・1
作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 演出/蜷川幸雄
出演/中野富吉、益田ひろ子、田内一子、小川喬也、郄橋清、佐藤禮子、ちの弘子、倉澤誠一、遠山陽一、葛西弘、宅嶋渓、大串三和子、加藤素子、寺村耀子、石井菖子、小渕光世、吉久智恵子、竹居正武、美坂公子、北海雅章、田村律子、関根敏博、宇畑稔、林田恵子、小林允子、徳納敬子、石川佳代、滝沢多江、宮田道代、重本惠津子、森下竜一、竹居正武、神尾冨美子、高田誠治郎、中村絹江、小林博、百元夏繪、谷川美枝、都村敏子、上村正子、渡邉杏奴、西尾嘉十