(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「リッチマン」拙者ムニエル15周年記念公演

強引なストーリー展開とアクの強い笑い。お馬鹿と知りつつ、ついつい癖になってしまう拙者ムニエルも、そうですか、結成から15周年ですか。おめでとうございます。今や年1の公演ペースとなった彼らの、吉祥寺シアターを横長に使っての記念公演。
神社でお金を貰ったという息子の話を確かめにやってきた三人家族。果たして、神様ならぬ、大富豪が現われ、彼らに3億円をくれるというが、潔癖なのか、厳格なのか、それを断わる母親。しかし、父はいい年して演劇にうつつをぬかし、母親のパートも大した収入にならない。生活に困って母親はキャッツアイよろしく泥棒に入るが、やはりプライドが高くて、お金を手にすることはできない。
一方、父親の劇団に籍を置くメンバーたちも、それぞれに苦難の道を歩む。ひとりはロトに当選、三億円を手にするが、金を手にしたことで周囲の人々に対して疑心暗鬼に駆られ、鬱々とした日々を送る。もうひとりは、某国の工作員が毒を仕込んだアンパンを拾い喰いしたことから、医者に余命一週間を宣告される。彼のために、劇団員の面々は初めての舞台に挑戦するが。
彼らでしかありえない個性を確立しているという点で、素晴らしく揺るぎない拙者ムニエル。とはいえ、15年ともなるといささかルーティン、マンネリ化はやむないところで、年に一度の同窓会化も仕方なしというべきか。考えてみると、オリジナルメンバーも経験とともに齢を重ねているのだから、それなりのパワーダウンは無理ないところかもしれない。
それでも、妙にこじんまりとまとまったり、中途半端な洗練に向わないあたりはさすがで、彼らの持ち味のひとつに違いない破天荒さは、それなりに味わわせてもらった。今回もアフタートーク1回のみでゲスト待遇の澤田育子の出演を次回はぜひお願いしたい。(115分)

■データ
澤田育子がアフター出演のため帰京した日のソワレ/吉祥寺シアター
6・11〜6・21
作・演出/村上大樹
出演/加藤啓、千代田信一、伊藤修子、成田さほ子、山岸拓生、寺部智英、石川ユリコ、林屋聖子、溜口佑太朗村上大樹 、町田カナ、建みさと