(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「リビング」カスガイ 1st connect

柿喰う客の玉置玲央が、「演劇でお客様と色濃く繋がること」を目的に立ち上げたプロデュースユニットのカスガイ。構成員は玉置玲央ただ一人らしいが、キリンバズウカの登米裕一の脚本、えりぬきのキャスティングも楽しみな旗揚げ公演。

都心から電車で二時間。あるマンションに住む姉と弟。の日常は、ただ生きて居ればそれだけで日常だった。のだが、人間の欲がそれを許さない。少しずつ、狂い始めていくものなのだ日常は。だから生きてる。だから生きてほしい。リビングに集まる人々と、姉と、弟の、数日間。生きるか死ぬかの、話。 (公式ブログの「あらすじ」より)

ブラコンの姉とシスコンの弟。といえば、テーマはおおよそ見当がついてしまうだろうが、ありがちとはいえ、登米裕一脚本はその見せ方がなかなかうまい。突飛すれすれの登場人物たちがまるで合わせ鏡のような役割を果たし、物語の中心点に立つ姉の苦悩を浮かび上がらせていく。それと共鳴するような形で、弟の感情が飽和点に達するラストシーンも、クライマックスに相応しいテンションで、見事に物語を締めくくる。
全体に物語の運びは丁寧で、判り易いのだが、ビキニパンツ姿で自在に動き回る玉置玲央演じるメタフィジークな存在も、もっと出番があっていいだろう。不機嫌な表情を押し通す渡邊安理がいいが、脇を固める加藤敦や深谷由梨香も手堅い。送り手側の思いがきっちりと伝わってくるまずは上出来の最初の挨拶だろう。(110分)

■データ
マチネに行けず、ソワレに振り替えてもらって滑り込みセーフの楽日/王子小劇場
4・22〜4・29
作/登米裕一(キリンバズウカ) 原案・演出/玉置玲央(柿喰う客)
出演/須貝英(箱庭円舞曲)、加藤敦(ホチキス)、川村紗也(劇団競泳水着)、玉置玲央(柿喰う客)、深谷由梨香(柿喰う客)、村上誠基(柿喰う客)、渡邊安理(演劇集団キャラメルボックス)