(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「いのうえ歌舞伎・壊〈Punk〉蜉蝣峠」劇団☆新感線2009春興行

不覚にも、観る前はクドカンの本だということをすっかり失念してました。しかし、おポンチなイントロからして、紛うことない宮藤官九郎。新感線のマンネリズムは、観客にある程度のクオリティを保証するという意味でひとつの売り物だと思うが、この人の脚本はそれをあえてぶっ壊してしまう新鮮さがありますね。

荒涼とした街道、ここは蜉蝣峠。この峠で闇太郎(古田新太)はたまたま通りかかった元役者の銀之助(勝地涼)と出会い、二人は連れだって峠を下り、街へとおりていく。そこは、ならず者が集まる無法地帯・ろまん街。飯屋の亭主・がめ吉(梶原善)が二人に声をかける。がめ吉によると、この街は、立派<りっぱ>(橋本じゅん)率いる立派組と、天晴<あっぱれ>(堤真一)率いる天晴組による縄張り争いが激しいという。がめ吉の店からお泪<るい>(高岡早紀)という女が現れる。お泪は闇太郎と知り合いだというが、闇太郎は過去の記憶がないという。そんな闇太郎に、がめ吉は昔、この街で起きたある事件の話を始める。闇太郎の過去にはいったい何が…。そんな中、立派の息子・サルキジ(木村了)が江戸から帰って来て…。(公式サイトより)

ちょっとつかみどころのない前半は、前回脚本を提供した「メタルマクベス」とほぼ同様。しかし、どことなくにじみ出てくるようなクドカンのテイストは、物語の静の部分として悪くない。闇太郎の記憶や、町を襲ったサイコキラーのエピソードなど、後半に向けての伏線もしっかりと張られている。
動へと転回していく後半も、中島かずき版の新感線とは微妙に異なる爆発の仕方だが、見応えは甲乙つけ難し。ほぼ裸の舞台となるクライマックスまで、見せ場も多数ある。役者生活25年の節目を迎えた主演の古田だが、「リチャード3世」も悪くはなかったものの、難しい役を自分なりの解釈で演じるこの舞台の方に本領があるようにも思えた。(75分+休憩20分+85分)

■データ
高岡早紀勝地涼の仲が進行中だったとは…、のソワレ/赤坂ACTシアター
3・13〜4・12(東京公演)
作/宮藤官九郎 演出/いのうえひでのり
出演/古田新太堤真一高岡早紀勝地涼木村了梶原善粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、右近健一、逆木圭一郎、河野まさと、村木よし子、インディ高橋、山本カナコ、礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、村木仁、少路勇介、川原正嗣、前田悟