(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ホネノウツワ」zupa vol.3

山の手事情社の水寄真弓とOrt-d.dの倉迫康史のユニットzupa。その結成の理由を、もし山の手がなくなっても好きな演劇が続けられるように、と語っている水寄のコメントを見かけたけど、いや、素敵ですね、そのスタンス。今回の公演から、かつて第三舞台にいた藤谷みきが加わった模様。
古今東西の古典に材を求める点で、山の手事情社に通じるものがある。今回のテキストは、芥川龍之介の「地獄変」と坂口安吾の「夜長姫と耳男」で、そこから印象を抽出する作業を経て、台詞、体の動きなどに置き換えていく手法をとっているようだ。
山の手事情社経由でこのzupaに辿り着いたわたしは、今回が初見。骨=本質ということなのか。さらに人間には、その本質部分を被う肉体があって、それが本タイトルのいうところの骨の器なのだろうか。
男女のありがちなワンシーンをコラージュのようにならべた部分と、テーマに迫るアブストラクトな表現を行き来するが、わたしには後者がややハードル高く、ちょっと戸惑った。親しみやすい前者が、テーマへと導くプロムナードのような役割を果たしているのだろうか。わたしは、単純にそこを楽しんでしまい、気がつくと後者の得体のしれない暗黒を不意に突きつけられている自分に気づいたりして。そもそも個人的には原典を十分に咀嚼していない弱みもあって。
ただ、独特のエロチシズムというか、謎めいた吸引力がありますね、水寄真弓。いや、そもそも彼女を観にいったのだけれども。相方となった藤谷みきとのキャラクターの対比もいい感じで、ユニットの今後には引き続き注目していくつもり。(80分)

■データ
会場案内をされていた倉品さんについつい目がいくマチネ/下北沢小劇場楽園
3・12〜3・15(6ステージ)
構成・演出/倉迫康史(Ort-d.d)
出演/水寄真弓(山の手事情社)、藤谷みき、稲川光(4 RUDE)、牧山祐大( カブ)牛乳や)、丸川敬之(花組芝居)