(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「床下のほら吹き男」MONO第36回公演

石の上にも20年。(ぱちぱち)素晴らしいキャリアのマイルストンを打ち立てたMONOの新作は、ビュルガーの「ほらふき男爵の冒険」をモチーフにしたニッポンの姉妹たちの物語。
(以下、ネタバレを含みます。未見の方はご注意を!)
父母を幼い頃に亡くした南大路家の四姉妹。彼女らが暮らしているのは、両親の遺した斜面に建てられた古い家で、家と地面の間には広い床下が広がっていた。あるとき、ちょっと得体の知れない床下の暗闇に不安をおぼえた姉妹は、長女絵莉子(亀井妙子)の知人で、工務店を経営する浜島(土田英生)に見てもらうことにした。しかし、浜島は実は腹黒い男で、人のいい長女からぼったくろうと企んでいた。
浜島の指示で床下にもぐった工務店の社員たち(奥村泰彦、金替康博、尾方宣久)は、そこでお洒落なネクタイとスーツ姿の奇妙な男(水沼健)と遭遇する。自らの怪しい出自や姉妹に関する意外な事実を饒舌に語る男は、工務店の社員たち、さらには浜島を疑い床下の様子を見に来た絵莉子の妹たち(山岡徳貴子、ぼくもとさきこ、松田青子)に次々とおかしな話を始めて、彼らを翻弄していく。
水沼健のいかがわしさがぷんぷんと臭う床下の男は見事なまでのはまり役。彼が出てくると、舞台上の空気が微妙に変化する一瞬は、本作のツボだろう。ただ個人的には、この水沼の独壇場は、いわばファンタジーなのだから、服装や台詞だけでなくもう少しファンタスティックに映る工夫があってもいいと思った。
それにしても、床下の男の言動がもとになって、肉親であるがゆえに根深く、複雑な四姉妹の葛藤やコンプレックスが暴かれていくくだりは、さすがの面白さ。俄にスリリングになる展開に、心の中で思わず「待ってました」と声を掛けたくなるが、そのあとにやってくる、それぞれのその後が暗示されるエピローグも、ポジティブな暖かさがあって良かった。(110分)※15日まで。京都公演はすでに終了。このあと、大阪、名古屋、北九州の公演を予定。

■データ
隣席のおばさんが何故かピリピリとしてて、身じろぎすら憚られるソワレ/吉祥寺シアター
2・6〜2・15(東京公演)
作・演出/土田英生
出演/亀井妙子(兵庫県立ピッコロ劇団)、山岡徳貴子(魚灯)、ぼくもとさきこ(ペンギンプルペイルパイルズ)、松田青子、水沼健、奥村泰彦、金替康博、尾方宣久、土田英生