(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「四色の色鉛筆があれば」toi presents 4th

真面目なのも、一生懸命なのも十分に伝わってくるし、上手な役者もいるのだけれども、どうしてもその生硬さについていけないInnocentSphere(イノセントスフィア)だが、こちらはそこから派生したらしいユニット。作・演出の柴幸男、女優の黒川深雪、プロデュースの宮永琢生のトリオで、中心は女優の黒川らしい。去年のアゴラ劇場が一部で高い評判を得ていたのが、とても気になってました。
全体は、四つのピースからなっている。以下の説明は、ユニットによるネットの公演紹介から。

  1. 「あゆみ」… すべての道は私に通じる
  2. 「ハイパーリンくん」… 知識はつながり遥か彼方へ旅に出る
  3. 「反復かつ連続」… 一人で演じる四人姉妹の朝食風景
  4. 「純粋記憶再生装置」… 記憶が生まれて消える瞬間

具象に徹するイノセントに対して、このtoiの思い切った抽象化は見事のひとこと。彼らの言葉を借りれば、まさに発明で、そのユニークな表現形態が素晴らしかった。いずれも、小刻みな繰り返しが独特のリズムを生んでいて、観る者のイメージをどんどん膨らませていく。キーワードは、反復と時間のような気がする。
過去と現在を行き来しながら、時間の流れ女の子ふたりの人間関係に時の流れの物差しを当てる1、音楽的(ラップ)な台詞に乗せながら、膨張する宇宙を舞台上で具現化していく2、ある一家の慌しくも暖かい朝の団欒のひとこまを家族それぞれの視点から反復して再構成してみせる3、カップルの幸福な過去と残酷な現在をシンプルな再生装置と化した四人の役者が再現していく4。
1も2も、その斬新な面白さに興奮させられたけど、わたしは内山ちひろがひとり五役(四人姉弟と母親)を演じる3の反復ごとにその情景が浮かび上がってくるさまにうっとり。さらにエピローグのワンシーンに完全に打ちのめされて、ついに涙してしまった。そのためか、1〜3での既視感が先行したためか、4はやや印象が薄かった。
しかし、それにしても舞台上のパフォーマンス(といっても完全に演劇)の新鮮さに感服しました。(100分)
■データ
立ち見まで出て大盛況の楽日マチネ/三軒茶屋シアタートラム
1・27〜1・28
作・演出/柴幸男
出演/黒川深雪(InnocentSphere)、青木宏幸、内山ちひろ(インパラプレパラート)、岡田あがさ、ゴウタケヒロ(POOL-5)、斎藤淳子、佐藤みゆき(こゆび侍)、武谷公雄、永井若葉(ハイバイ)、中島佳子(無機王)、中野架奈、中林舞(快快)、二反田幸平(青年団)、平原テツ、三浦知之(InnocentSphere)、山本雅幸青年団