(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ミチクサ−前に進まない話に浸る幸せ。」tea for two 第16回公演

tea for two は、東大構内の駒場小劇場で活動している 劇団綺畸のメンバーが中心となって1999年に旗揚げ。「テーブルとイスのあるシチュエーション」を看板に掲げて、喫茶店の隣の席の会話が聞こえて来るような身近な距離感のお芝居に取り組んでいるとの前知識を得て、さて観劇。
居酒屋の個室に集まり、ひそひそ話で動物園の襲撃を企む若い男女たち。やがて、彼らは高校時代のクラスメートで、久々のクラス会に集まった面々だということがわかってくる。場所は、そのひとりが店長をやっている居酒屋。しかし店が忙しく、店員たちの手前、彼は宴会におちおち加わることもできない。
そこにやってきたちょっと場違いの中年女は、彼らの恩師の娘だった。風邪で寝込んだ父親からピンチヒッターを任されたはいいが、教え子たちのことを知らないため、話をあわせるために自宅と携帯電話でのやりとりに余念がない。どこか噛み合わないやりとりから、やがてクラス会は奇妙な緊張感につつまれていく。
謎に満ちた冒頭の掴みもいいし、会話にまかせた物語の運びも見事。実によく出来た脚本だと思う。観終えたあとのハートウォーミングな余韻は、このカンパニーの持ち味だろうと思わせる。
ただ欲をいえば、やや詰め込み過ぎのきらいがなきにしもあらず。そのせいで、物語の途中で謎が放置されたり、消化不良を起こしているように思える箇所もある。(最後には、伏線、謎はすべて回収、消化されるのであるが)観客の集中力をもう少し考え、謎を絞り込んだり、プロットを整理するなどの工夫があれば、もっとシャープな仕上がりになり、持ち前の軽妙さもさらに活きると思うのだが。(90分)

■データ
観終えて下北沢の夕暮れを気分良く歩いた5時始まりのソワレ/下北沢「劇」小劇場
11・13〜11・16
作・演出/大根健一
出演/塚原美穂、小森健彰、湯澤千佳、鈴木雄策、斉藤岳((株)手力プロダクション)、清野祐美(劇団ひまわり)、たむらもとこ((株)手力プロダクション)、畠山明子((有)飛田企画)