(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「いつか見る青い空」弘前劇場公演2008

青森での地元公演をぜひ観てみたいと思う弘前劇場。いや、そのうちなんて思ったり、口にしたりするだけじゃいつまでたっても実現しっこないですよね。なので、来年あたり思い切って足を運んでみなければ、と思う今日この頃。
どういうわけか住職のいない禅宗のお寺。そこに近藤家の3人娘たちが、刀研ぎを生業としている叔父の佳久(副士賢治)とともに暮らしている。35歳で建築家の留美(小笠原真理子)を筆頭に、それぞれ自分の仕事を持って独立している。しかし、簡単なお経くらいは、彼らにもあげることができるようで、檀家との付き合いも問題ない様子。コミュニティの拠点として、近隣の人々もなにかと集まってくる。
しかし、佳久には人を殺めた過去があり、かつて彼を父親の仇と思う佐々木少年(平間宏忠)に刺されそうになったことがあった。娘たちの母親の葬儀が終わったばかり夕暮れ、立派に成長を遂げ、今は大学院に通う佐々木が再び佳久を訪ねてくる。
弘前劇場の楽しさは、もちろん濃厚な人間ドラマの見応えもあるのだけれど、わたしにとっては津軽弁の台詞の歯切れと会話のテンポの良さが何よりもおいしい。魚屋夫婦やリンゴ農家の主人、地元の警察官までもが集まるお寺の庭先での会話の豊穣なことといったら。
食べ物をめぐるスノッブすれすれの薀蓄や下世話な中で交わされるデカルトの名前が頻出する哲学談義も洒落っ気として溶け込んで、まったく違和感ない。大人の演劇というカテゴリーをつくるとしたら、そこに真っ先に収めたいのが弘前劇場の芝居である。(100分)

■データ
劇場の近所に落ち着いて時間がつぶせるいい喫茶店がほしいとつくづく思うソワレ/シアターグリーンBIG TREE THEATER
11・7〜11・9(東京公演)
作・演出/長谷川孝治
出演/福士賢治、永井浩仁、長谷川等、濱野有希、平塚麻似子、小笠原真理子、木村元香、平間宏忠、田邊克彦、柴山大樹