(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「死立探偵」劇団ジャブジャブサーキット第47回公演

やたら予告編の出来が良くて、期待が大いに募る映画「K−20」。ジャブジャブサーキットが、その原作者としてちょっとした時の人である北村想を草案者に招いてのシリーズ第三弾である。
店内の奥に探偵事務所があるちょっと変わったカフェ。なぜかミステリ好きが集まる店でもあるようだ。事務所の主は、探偵の稼業からすっかり遠のき、リタイア同然の身にある結城又三郎(栗木己義)。そんな彼を、女性の依頼人(咲田とばこ)が訪ねてくる。この店を出た途端に自分は姿を消すので、それを探し出してほしいというのだ。
なんとか断ろうとする又三郎に対し、女は「あなたにしか解決できない事件」であり「なぜなら事件の賞味期限があと半年なのだ」と告げ、ほとんど一方的に姿を消す。実は又三郎は病で、余命あと半年と言われる身だった。ライバルの星野警部(小山広明)や、かつての探偵助手カノコ(岩木淳子)も現われ、又三郎はやむなく最後の事件に取り組むが。
謎もその解明もあるのだが、少なくとも狭義の「謎とき(=ミステリ劇)」とはいえないような。しかし、登場人物の奥行きある人間性や、テンポのいい会話のジャブで説明される人間関係など、この劇団の美味しいところを味わうのに不足のない物語であることは間違いない。主人公を蝕む記憶障害が、幕切れの切ない余韻を印象深いものにしている。(120分)

■データ
連日の激務でついつい睡魔に襲われ、念のために戯曲を購入したマチネ/下北沢ザ・スズナリ
11・5〜11・9(東京公演)
草案/北村想 作・演出/はせひろいち
出演/栗木己義、小山広明、岡浩之、咲田とばこ、中杉真弓、岩木淳子、荘加真美、くまのてつこ、鳥岡寿江、なかさこあきこ、はしぐちしん(コンブリ団)