(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「はやねはやおき朝御飯」岡崎藝術座

先の「三月の5日間」の2会場連続公演が大躍進となった模様の岡崎藝術座。劇団名は、てっきり地名か何かかと思ったら、主宰が借金した昔の友人の名前から取ったらしく、2003年4月設立。「朝公演・朝食付き」と銘打たれての公演は、本公演の「リズム三兄妹」の姉妹編とでもいうべき位置づけのよう。
OLで、ついには国民的歌手とまで謳われるようになったシンガー・ソングライターのサクセスストーリー。仕事に疲れ、人生に疲れた山田歌子(西田夏奈子)は、入り浸るようになったカラオケで歌の才能を開花させ、巣恋歌(すごい・うた)という名で歌手デビューを果たした。ある朝のこと、いつものようにマイクを握りしめ、通勤用のスーツを着たままの姿で目を覚ました彼女。その日が祭日であることをすっかり忘れ、遅刻してはならじと、大慌てで家を飛び出すが。
そんな彼女のコアなファンらしいリズム三兄妹(鷲尾英彰、白神美央、内田慈)。巣恋歌のストリートライブがあることをちらしで知った彼らは、周囲の人々を扇動しながら、ライブ会場の渋谷ハチ公前へと向かう。かくして、早朝のJR渋谷駅前で、バイオリンを弾きながらの巣恋歌のライブが始まる。
アゴラ劇場の客席→奈落の楽屋→劇場待合室(ほか弁で朝食)→こまば東大前駅まで三兄妹と徒歩→井の頭線で渋谷へ移動→東急デパート前でライブ、という流れ。なので、参加型イベントの色合いが非常に強し。乗車券を貰って異動しながらの体験系は、去年のScience project+マヤ印の「ワーマン」ですでに経験しているわたくしも、朝ごはん(美味しいほか弁でした!)を食べながら、ガラス越しに通行人に絡みながら即興芝居を演じる西田夏奈子を眺めるのは、なかなか愉快でした。
祭日(文化の日)の早朝ということもあって、客席で開演を待つ観客もさすがにテンション低いのだが、舞台上で布団を頭からかぶって爆睡する巣恋歌の脇の床下から三兄妹が顔を出した途端、一気に目を覚まされ、こちらもハイテンションに。本編と合わせても、三人の強烈な存在感がぐいぐい迫ってくる幕開きのシーンが、わたしはもっとも好きで、この三兄妹って何?って好奇心とこれから何が始まるの?って期待感が、一気に膨らんだ。ただし、本編とこのスピンオフのどっちを先に観るかで、全体の印象はかなり違ってくるかもしれない、という気もする。(90分)

■データ
鯖味噌、から揚げが入ったほか弁は隣の惣菜屋さん謹製でしょうかの早朝マチネ/こまばアゴラ劇場
11・3、11・9の2回公演
作・演出/神里雄大
出演/白神美央、内田慈、億土点(Power Doll Engine)、鷲尾英彰、坂倉奈津子、召田実子、西田夏奈子