(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「男の旅‐なつこ編‐」ハイバイ オムニ出す(落/落語)

今回のオムニ出すで、唯一の新作と思われる一篇。
先輩格の男に率いられ、三人の男が連れ立って風俗の店に繰り出していくのが発端。あーでもない、こーでもないと店の前でやっていると、店員が出てきて、いつのまにか価格交渉になってたりして。結局、乗せられて店に入る三人。指名した女の子が、一緒にこの店に来た友人の彼女だと知って、動転する男もいれば、一方個室で時間を過ごすうちに、風俗嬢のなつこを真剣に好きになってしまう純情男もいて。
ひとりが複数の登場人物を演じるという落語の要素を演劇に移植してみると、という試み。前半のアフタートークで岩井から種明かしがあったようだが、東京デスロックの「三人いる」の応用編で、ひとりの人物をひとりの役者が演じるというルールから逸脱していく。観客の頭の中にさほど混乱が起きないのは、一定のルール化がなされている(?)からか。
ひとりが幾人もの役柄を演じたり、ひとりの役柄を幾人もの役者が演じて、わけわからない状態に陥る中盤が、おそらくこの芝居のハイライトだと思うが、友人の彼女との遭遇や、風俗嬢に一目惚れといったお話の行方の方が気になってしまうわたし。なので、この手法がちょっとうざいなぁ、と思った矢先に唐突ともいうべき驚きのサゲがやってくる。なるほど、これで落語なんですね、納得。(50分)
■データ
居心地悪くなるくらいの性描写がいつものハイバイらしくなく思えたソワレ/原宿リトルモア地下
10・19〜11・5
作・演出/岩井秀人
出演/夏目慎也(東京デスロック)、高橋周平、坂口辰平、師岡広明、石澤彩美