(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ニューデリーの恋人たち」sunday play#2

1993年に神戸大学自由劇場OBによって旗揚げされた劇団☆世界一団だが、2004年に第一期を終了し、劇団としてはいったん幕を降ろした。というのは彼らのホームページからの情報だ。観劇から遠ざかっていた時期でもあり、その頃の彼らをまったく知らないわたしは、あとで風評を知り悔しい思いをしている。そんなこともあって、充電期間を経て2006年に再スタートを切ってからは、東京公演を待ち望んでいました。その後間もなくsundayと改名した彼らの、久々の東京公演である。
雨の東京。カレーを食べながら、パジャマ姿で母親の帰りを待つ男の子と女の子。同じ場所だが、別の時間の物語なのか、子どもたちのシーンとシンクロするように同時進行するのは、夫婦または恋人同士の男女カップルのエピソードだ。共通点は、男の子も男も抜けそうな虫歯があることのようで。
さてインドでは、ホテルに泊まっては備え付けの聖書に爆弾をしかけて廻っている日本人の男がいる。その彼を追っかけて日本からやってきたという女性とは、すれ違ってばかり。一方、たまたま出会って、ヒッチハイクよろしく若い女性を拾ったヒッピー風の青年は、レンタカーでニューデリーに向かう途中、神聖な存在である牛をはねるという重罪を犯してしまう。
舞台は東京から始まり、やがてニューデリーへと飛ぶ。前記のほかにも、謎の探偵、三人連れの日本人女性旅行客、悪漢、サーカスの小人と、賑やかな登場人物が意味深なエピソードを繰り広げ、めまぐるしく交錯していく。さらに時間軸もいくつかあるようで、これはもう追っかけきれない、と中盤あたりで匙を投げそうになりました、正直言うと。
しかし、このまま終ってしまうのではと不安に駆られる中、終盤にかけてやっと物語は劇的に収束を始める。それと同時に、すれ違いを繰り返す男女というモチーフも、にわかに印象深いものに映ってくるから不思議。脚本、とてもよく練られていると思います。
劇的なことが色々と起きているのに何故か淡々と進んでいく軽妙なユーモアをたたえた物語とともに、ピンクやグリーンなど、可愛らしい色調を基調にした舞台装置。さらには、巧みな照明の使い方など、独特の美的なセンスが全体を覆うおしゃれな空間も新鮮でした。次回も、またぜひ東京公演をお願いします。(120分)

■データ
でも子役のお子様を交えたアフタートークはちょっと勘弁してほしかったマチネ/新宿シアターモリエール
10・11〜10・13
作・演出/ウォーリー木下
出演/赤星マサノリ、小松利昌、平林之英、宮川サキ、井田武志 安元美帆子 吉陸アキコ 椎原小百合、小山茜(売込隊ビーム)、山川卓也、後藤花怜、服部まひろ、竹内宏樹(空間悠々劇的)、若旦那家康(ROPEMAN(30))、西村朋恵