(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ニッポニア・ファンタジア」バジリコFバジオ

今年で9回目という小劇場系の次世代育成事業ともいうべき MITAKA “Next” Selection だが、今回の二番手として登場したのはバジリコFバジオ。去年の「AC/DC WORLD'S END SCHOOL GIRL!!!!!!」@中野ウェストエンドスタジオでブレイクを確信したわたしにとっては贔屓の劇団だけれども、その後の成長はまだまだ課題もあって。
地球上の文明は滅び、そのさびれた遊園地にも人影は見当たらない。そこに親子連れでやってきたエイリアン一家の長女ユビコは、両親とはぐれ、古ぼけたおばあさんロボットと出会う。彼女の名はヨドミ。かつてヨドミは人間の少女だった。しかし、ロボットに恋した彼女には、想像を絶する数奇な運命が待ち受けていた。
ファニーな人形劇が絡んでくるユニークさも去ることながら、バジリコの醍醐味は、ひっくりかえしたおもちゃ箱のように、とっちらかした展開を、幕切れ間近でひとつのストーリーに収束させていく物語の作りにあると思う。それが成功に思えたのが、先の「AC/DC WORLD'S END SCHOOL GIRL!!!!!!」だったわけだが、しかしその成功も実は失敗と紙一重のもので、現時点での技量では、収拾のつかないまま観客を置き去りにする危険もないとはいえない、というのが正直なところだった。
その失敗例は、次の「最北端の姉妹 次女のフクロウ/長女のヒグマ」で、ストーリーに破天荒な面白さを盛りながらも、展開に明快さを欠くため、エンディングの妙を味わえないもどかしさが残ってしまった。そして残念なことに、この「ニッポニア・ファンタジア」にも、同じことがいえる。
宇宙人、オタク、超能力者、竹内まりあ、ナビタイムのおじさん等などと、実に盛りだくさんで、賑々しい展開の中盤が、やがて伏線をさらうようにひとつの物語へと収束させていく道筋が確かに見えるのだが、その過程があまりに荒っぽ過ぎる。勢いでねじ伏せることは決して悪いことではないが、それに頼ってしまってはダメだろう。
というわけで、次回以降に期待する。と書くと、決まり文句や社交辞令のように聞こえるかもしれぬが、バジリコFバジオの猥雑な面白さには本当に期待しているのである。(130分)

■データ
四苦八苦しながら自転車が宙を行くエンディングに拍手のマチネ/三鷹市芸術文化センター星のホール
10・10〜10・13
作・演出/佐々木充郭
出演/横島裕(もざいく人間)、田中あつこ、帯金ゆかり(北京蝶々)、武藤心平(7%竹)、亀岡孝洋(カムカムミニキーナ)、三枝貴志、木下実香、石川ユリコ(拙者ムニエル)、近藤佳秀、伊藤伸太朗(チャリT企画)、樋山剛一、武田諭、中込恭史、千葉おもちゃ、井黒英明、八木勇人、杉村こずえ、榎本真希、新井田沙亜梨(7%竹)