(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「續・河をわたる」菅間馬鈴薯堂第22回公演

ここのところ王子小劇場の良心といった存在でもある菅間馬鈴薯堂(すがまぽてとどう)は、早稲田小劇場にいた菅間勇が率いるカンパニーで、1994年の旗揚げ。
勝鬨橋に近い隅田川河川敷に、ホームレスたちが流れてきて、ごく小さな集落を構え、暮らしている。旅役者でもあった初老の女性を中心に、それぞれにわけのある人々が集うコミュニティだ。日々の糧はというと、カップ麺販売のあがりで、お客さんには芝居や歌を披露する。
ここに逃げ込んでくる者、ただホームレスをぼこぼこにしたい者、動機のよくわからない者など、あれこれやってくる者も多い。しかし、一方、自分を見つけるためにここから出立しようとしている者も実はいる。そんな折、彼らの定住に力を尽くした区役所の職員が、悲しい知らせを届けにくる。近隣住民からの苦情で、彼らはここを出て行かねばならないという。
大都会の片隅で繰り広げられる静かな、しかし力強い人間の生の物語。アングラの出自を思わせる空気にも、かび臭さはない。人間が陥りやすい偏った見方を取り払っていくかのような静かなアジテーションがあるが、それも決して押しつけがましいものではない。
そもそもは菅間が22年前に太田省吾の旧転形劇場とともに上演した作品のようだが、外観はともかく、中身は不思議なくらい古びていない。時代は本質の部分であまり変わらないということなのか、それともテーマの切り取り方が絶妙なのか。役者総出で水着姿を披露する終盤の水泳大会の場面も賑々しく、いい盛り上がりを見せながら、クライマックスの旅立ちへと絶妙に繋いでいく。(80分)

■データ
いつもとは劇場内に漂う空気がちょっと違う楽日のマチネ/王子小劇場
9・19〜9・23
台本・演出/菅間勇
出演/稲川実代子、橋口まどか、西山竜一(無機王)、瀬戸口のり子、植原弘次(劇男)、泉麻子、生内理恵、千田里美、瀧澤孝則(HUSTLE MANIA)、吉川湖(HUSTLE MANIA)