(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「EKKKYO-!]冨士山アネット produced

越境、すなわちボーダーレスをテーマに、冨士山アネットがキュレーターの役割を担う演劇、パフォーマンス、ダンスなどを集めたプロデュース公演。ちなみに、冨士山アネットは、一昨年だったかククルカンによる四季公演(クローバー:秋)に客演していた長谷川寧を見かけてから(良かった!)、実はマークしていたのだけれども、わたしは今回が初見である。
プログラムは以下のとおり。

  • 夙川アトム「ひとりコント」
  • PINK(ピンク) 「子羊たちの夕焼けボート」
  • 劇団山縣家「ホームビデオ家族でスズナリ」
  • 快快(faifai)「いそうろう(リメイクver.)」
  • FUKAIPRODUCE羽衣「お金の話が終わったら」
  • 冨士山アネット「行方知れず」

オープニング・アクトにあたるコントの夙川アトムは、テレビにも出演している芸人さんとのこと。幕間にも差し挟まれるショートコントは、さすがに達者な話芸だと思うが、個性という点ではいまひとつ。しかし、アフタートークでの気遣いなど、さすがプロだと感心させられた。
PINKは、アゴラ劇場での「ピンク祭」に続く二度目だが、勢いと熱気は旬の輝きがあるものの、やはり全体のつくりが単調だと思う。女子体育会系の乗りを基調とするにしても、せめて箸休めでもいいので、もうひとつ別の顔も見せてほしいところだ。
今回のお目当てだった劇団山縣家は、家族という役者間の繋がりが新鮮。脱力系のエピソードをオムニバスに綴った構成だが、そのひとつひとつに家族の年輪(?)を思わせる味わいがある。素っ頓狂と紙一重のお母さんのダンスも最高。
快快の「いそうろう」は、4x1h Playのために書き下ろし、すでにリーディング公演が行われていて、春に「ジンジャーに乗って」(@王子小劇場)のおまけ公演としても上演されているようだが、わたしは初見。うーん、これはやられました。ワーカホリックのモモカとぷーのイチコというふたりのルームメイトの演じ方が実に奇抜(大道寺梨乃、山崎皓司)だが、切なさがストレートに心に突き刺さってくる。シンプルで力強さを備えた篠田千春の本、すごいです。
FUKAIPRODUCE羽衣は、まるでカラオケ・ショーとでもいいたくなるようなミュージカル仕立てだけれども、その強引な乗りは無理やり見る者の心をこじ開けるようなパワーがある。自作曲の出来映えの良さに追うところも大きい。
冨士山アネットは、さすがの洗練を見せるダンスパフォーマンスを披露。芥川の「藪の中」がモチーフのようだが、ストーリー性を持たせながら、物語に依存しない別の次元の表現形態(強いていえばパフォーマンス・アートか)に到達しているのが素晴らしい。出演者の体の切れが見事でした。
2日間3公演というニッチな形態ながら、ショーケースとしての充実ぶりは素晴らしかったと思う。あれこれ観れる効率の良さが最高。ジョイントする側の苦労は察して余りあるが、次の機会をぜひ作ってほしい。(120分)

■データ
客層バラバラだけど、演劇関係の人々多し。なるほど注目のイベントですねのマチネ/下北沢ザ・スズナリ
9・2〜9・3