(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ウ−マン・イン・ブラックThe Woman in Black -黒い服の女-」

本邦の初演(92年)と再演(93年)は斎藤晴彦萩原流行、再々演(96年)は斎藤晴彦西島秀俊、さらに斎藤晴彦上川隆也になって99年、2003年と上演されて、今回が6回目の「ウーマン・イン・ブラック」。本国のイギリスでは1987年初演、1989年6月にウエストエンドのフォーチュン・シアターに移ってからは、19年間にもわたるロングランを続けているというが。
中年の弁護士キップス(斎藤晴彦)は、ある青年時代のおぞましい記憶に、今も苛まれていて。それを家族に打ち明ける決心をしたかれは、その手段としてひとりの青年俳優(上川隆也)を雇い、古い劇場を借りる。その手段というのは、その過去を舞台劇として再現してみようというもので、彼は俳優とともに観客がひとりもいない小さな劇場の舞台にあがる。
キップスの回想によって、次第に明らかにされていく若き日々の悪しき思い出。その仕事は、亡くなった老夫人の財産を整理する仕事だった。沼沢地に佇む古い館を訪れたキップスは、そこで謎の黒衣の女を見かけるが、彼女の正体は一向に判らない。たびたび目撃される女の影は、やがて青年弁護士の心を蝕んでいく。果たして、忌まわしき日々の再現は、彼をその呪縛から解放するのだろうか。
原作はスーザン・ヒル。その昔、早川書房のモダンホラー・セレクションに収録されたときに読んで、本当に怖い思いをした記憶がある。(ただし、モダンホラーではなく、古典的なゴシック恐怖小説だった)英本国での評判、わが国における再演につぐ再演、そしてとどめになったのは、信頼する識者(とくに名を秘す)の推薦が、これまた太鼓判だったからなのだが…。
うーん、ここまで詰まらないと、怒る気もしないですね。役者の芝居ではなく、大きな音や人工的な視覚効果で怖がらせようという、なんとも情けない志の低さだ。そのスペクタクルにしたところが、二流どころか三流もいいところ。
ふたりの役者にさほどの不満はないけど、演出が凡庸な分だけ、後半にかけては次第にその芝居振りが貧相に思えてくる。意図的なものかもしれないが(だとすると理由不明だが)、斎藤晴彦の発声が非常に聴き取り難いのも酷いなと思った。
しかし、なぜここまでロングラン?単純素朴に、その理由を知りたいものだ。(いや、実は知りたくもないが)(休憩20分を含む130分)

■データ
冷静に考えると劇中劇にする必然ってないのでは?のソワレ/渋谷パルコ劇場
8・7〜8・31
原作/スーザン・ヒル 脚色/スティーブン・マラトレット 演出/ロビン・ハ−フォ−ド
出演/上川隆也斎藤晴彦、?