(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ピース ―短編集のような……」グリング

あちこちの公演の作や演出にその名前を見かけることの多くなってきた青木豪。新作のタイトルは、ピース=peace(平和)=piece(断片)。よそへの提供脚本に、いくつかの新作書き下ろしを追加した、短編集のような、オムニバス長編のような作品。
物語の組成は次のとおり。(当日パンフより)

  • episode.0
  • episode.1 「花火の約束」 新作
  • episode.2 「僕の好きな先生」 新作
  • episode.3 「朝顔」 旧作(for oi-scale)
  • episode.4 「北向きの女」 旧作(for PARCO presents LOVE30 vol.2)
  • episode.5 「ピース」 新作

アメリカの原子力船の来航が噂される海に面した地方都市を舞台に、年齢や夫婦関係など、曲がり角の年齢に達した人々が直面する問題の数々。人生を揺るがされる彼らの、それぞれの悲喜こもごもが描かれていく。
コアになっているのは旧作の2つで、それに前日と後日のエピソードを加えて、絶妙のパッチワークを構成しているあたりは、さすが。登場人物のきめ細かい造形と、そこから立ち上がる濃い存在感は、いつもの青木豪=グリングだ。
ただ、個々のピース間の関連性がやや中途半端にも思え、長編と短編集の狭間でどっちつかずの感もある。普段のグリングに較べて見劣り感があるのは、そのあたりが原因か。場面、場面の見応えは十分ながら、全体を俯瞰するとやや散漫な印象があるのが惜しまれる。(110分)

■データ
前方席のベンチが低すぎてやや腰に来たソワレ/下北沢ザ・スズナリ
7・30〜8・11
作・演出/青木豪
出演/中野英樹、鬼頭典子(文学座)、林和義、青木豪、杉山文雄、佐藤真弓(猫のホテル)、二階堂智、萩原利映、黒川薫、星野園美、遠藤隆太