(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「五右衛門ロック」劇団☆新感線二○○八夏興行 SHINKANSEN☆RX

「SHINKANSEN☆」に続くアルファベットのクレジットがちょいややこしいが、公演ごとに異なるこの区分が実は重要。RXは音楽劇(ミュージカル仕立て)の区分と思しい。SHINKANSEN☆RXとしては4年ぶり、つまりあの傑作「SHIROH」以来ということだ。
天下の大泥棒石川五右衛門古田新太)もついに御用。お縄を頂戴し、京都の三条が原で釜茹という段になったが、間一髪のところを女悪党真砂のお竜(松雪泰子)の機転で脱出に成功する。九死に一生をえた五右衛門は、お竜の口車にも乗せられて、秘宝の月生石を求めて南の海に浮かぶタタラ島を目指して帆をあげる。
おりしもタタラ島では、隣国バラバとの間で戦いが繰り広げられていた。バラバの王ボノー(橋本じゅん)と后のシュザク(濱田マリ)は、怪しい南蛮人のコンビ(川平慈英と右近健一)にそそのかされ、高価な月生石目当てにタタラ島を侵略。わけありの王子のカルマ(森山未来)を旗頭に島に攻め入り、ガモー将軍(粟根まこと)率いるタタラ軍と激しく交戦中だった。
一方、波濤を越える五右衛門は、しつこく追ってくる京都の役人岩倉(江口洋介)とともに、突如襲ってきた嵐に揉みくちゃにされながらも、命からがら島にたどり着く。しかし多勢に無勢もあって、剣の使い手クガイ大王(北大路欣也)の手に落ちた五右衛門は、罪人として月生石の採掘現場へと送られる。そこで五右衛門を待ち受ける穴掘りを指揮する女傑インガ(高田聖子)は、実は意外な人物だった。
と、あらすじ紹介がやや長くなったが、石川五右衛門を主人公にしながら、大方の裏をかいて舞台を京都から南の海に移し、チャンバラ時代劇から冒険活劇へとスライドさせたアイデアは、さすがは中島かずきだと思う。舞台の表で意表をつきながら、裏では十六世紀末の日本と繋がっているという仕掛けには、(やや強引といえなくもないが)着想の妙ありと言っていいだろう。
しかしながら、新感線ファンとしての高揚はというと、いまひとつ。北大路欣也松雪泰子森山未來江口洋介といった豪華すぎる客演陣は確かに高い木戸銭に見合うものかもしれないけれど、ハイライトのシーンがやや多すぎるなど、散漫な印象も生んでしまっている。新感線の役者たちが負けているというのでは決してないが、多すぎるスターが劇団としての持ち味を薄めているのは、間違いないと思う。
らしくなさは、コマ劇場という舞台を意識したかのような大掛かりな装置や派手な殺陣を散りばめた絢爛な舞台にもあって、新感線お馴染みの華やかとは微妙にその質感が違う。ストーリーも含めて、もう少し深いところを抉るようなアクの強さがあってもいいような気がした。
生演奏と歌もふんだんにあって、お祭り的な賑やかさを楽しめばそれでいいという向きもあるだろう。しかし、SHINKANSEN☆RXとしては過去に「SHIROH」がある。ついついそれ以上を欲張りたくなってしまうというのが、ファンとしての人情ではないか。(休憩20分を含めて210分)※東京公演は終了。大阪公演は8月24日まで。

■データ
わたしにとっては最後のコマとなりそうな二日目ソワレ/新宿コマ劇場
7・8〜7・28(東京公演)
作/中島かずき 演出/いのうえひでのり
出演/古田新太松雪泰子森山未來江口洋介川平慈英濱田マリ橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、右近健一、逆木圭一郎、河野まさと、村木よし子、山本カナコ、礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、保坂エマ、冠徹弥、村木仁、川原正嗣、前田悟、飯野めぐみ、村緒里江、NAMI、角裕子、福田えり、葛貫なおこ、早川久美子、鈴木奈苗、蝦名孝一、安田栄徳、青山航士、古川龍太、武田浩二、藤家剛、矢部敬三、工藤孝裕、根岸達也、加藤学、北大路欣也
バンド/岡崎司(g)、高井寿(g)、福井ビン(b)、岡部亘(d)、松田信男(key)、松崎雄一(key)