(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「眠れない夜なんてない」青年団第56回公演

吉祥寺シアターにて青年団久々の新作。老後の生活をマレーシアで送る日本人のための定住型リゾートマンションを舞台に、そこで暮らす日本人たちのそれぞれの事情と人間模様を描く。
退職リタイア組がいたり、仕事の赴任先がこの地という現役組がいたりと、居住者の高齢者夫婦たちがここで暮らす理由は実にさまざまだ。彼らを訪れる子どもたちも、親の健康状態が心配だったり、親離れできないかったりと、やはりさまざま。そこに下見を兼ねたショートステイ組のカップルたちが加わって、施設の広いロビーは人の出入りで実に賑やかだ。
現役組の妻(山村崇子)をめぐる意外な人間関係が次々と明らかになってきたり、ラブラブなカップルが実は離婚旅行のためにやってきたことなどが徐々にわかっていく。異国の地を終いの住処と決めた彼らの心には、日本へは帰りたくない、という強い思いがあって。
アジア進出の新しい形を通じて、日本人の心のあり方をテーマにした平田オリザの新作である。しかし、そこに繰り広げられるのは、老後の日本脱出という流行現象の時評的な解釈ではなく、老いや衰えをめぐるいくつかの普遍的なドラマ(フィクション)だ。
今更ではないが、達者な役者たちがひとりひとりの登場人物を濃密に描くのは、やはり青年団ならでは。ほぼ全員が、それぞれにいい芝居を見せてくれる。お約束(?)の同時多発会話などの彼ららしさもたっぷりだが、ガムを使った濃厚なラブシーンにはびっくり(いや、ドキドキ)しました。舞台をゆったりと使った南国情緒を漂わせる舞台装置も素晴らしかったと思う。(115分)
■データ
やはり平田+志賀のアフタートークではパフェおやじに話題が及んだ休日のソワレ/吉祥寺シアター
6・27〜7・6
作・演出/平田オリザ
出演/篠塚祥司、大崎由利子、山内健司、ひらたよーこ、松田弘子、足立誠、山村崇子、志賀廣太郎、辻美奈子、天明留理子、渡辺香奈、大塚洋、大竹直、郄橋智子、堀夏子