(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「その夏、13月」チェリ−ブロッサムハイスクール PLAY_4

2005年旗揚げ、小栗剛(作)、柴田雄平(演出)は高校時代の仲間らしいが、劇団結成は卒業から10年後のことだったようだ。最初の公演は、翌年の2006年に行われたとHPには記されている。最近、ちらしや劇評が目につくようになったが、わたしは味わい堂々の宮本奈津美の名前が客演にあったことに興味をひかれて。
冒頭は、葬儀のシーンである。場所は日光にある、もとは学校だったのか、公共施設の中。死んだのは、若き女性のカメラマンとおぼしい。特別な葬儀のようだが、主催者たちにしても弔問にやってくる人々にしても、どこかよそよそしく、トゲトゲしい。弔問客の中には主催側をののしる者までいて、異様な空気の中その式は執り行われることに。
物語はそこを基点に、過去へと遡っていく。地元の自治体が、文化事業として取り組む「アート・アパートメント・プラン」は、さまざまな分野で可能性を秘めた若手アーティストたちを育成する事業だ。画家もいれば、作家もいて、カメラマンもいる。彼らは共同生活をしながら、作品制作に取り組んでいる。すべてが自由という中で、たったひとつのルールは、月一度の審査会で成果を発表できない者は去らなければならないというもの。物語は出発点へと至る13ヶ月の道のりを、逆の時間の流れで再現していく。
本作の出発点は、そもそも時間を遡行するという手法だったのだろう。さかしまな時間の流れは、ジグソーパズルを完成させていくような緊張感を生んでいるし、倦怠の苦味から蜜月の甘みへと逆に向かう辿り方には不思議な甘酸っぱさがある。ただし、アーティストたちの人間関係が、芸術的な葛藤とかではなく、ありがちな恋愛関係に流れてしまうのは、現実的かもしれないが、いささか物足りない。
宮本奈津美演じるカメラマンが、最後の最後まで謎を引き摺る展開で、なんとか全体の緊張感を支えるが、さすがにそれだけでは弱いというのが正直な印象。時間を遡ったのちに、全体をしめくくるフィニッシュのようなものを見せてほしかった気がする。何かと制約の多い公共事業という設定を引っぱってきたのも、物語の枠組みを狭めているように思った。(100分)

■データ
ふんだんな映像にもこだわりがありそうなマチネ/新宿御苑サンモールスタジオ
6・27〜7・1
作/小栗剛 演出/柴田雄平
出演/渡部ラム、荒川修寺、野田政虎、雪森しずく、小栗剛、柴田雄平、岩崎正寛(劇団円)、石黒淳士、木村友美、小坂萌、田村通隆、星野奈穂子、三枝貴志(バジリコFバジオ)、宮本奈津美(味わい堂々)、山崎広美