(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「Root Beers」KAKUTA 漢祭り2008 in U.S.A.

漢(おとこ)祭りと銘打たれているので、夏にオール男優はちょっと暑苦しいな、と思ってたところ、幸いにして違いました。桑原裕子以下、看板の女優陣も賑やかに加わっての、2004年上演作の再演。
ロサンジェルスの下町にある、ちょっとあやしいモーテルの一室。はるばる太平洋をわたって、ヤクザ者の欽次が弟分たちを引き連れてやってきたのは、対抗勢力のボスを消するため。しかし、ロスに到着した途端交通事故に遭ったせいで、一夜明けると欽次は記憶喪失に陥っていた。
自分がヤクザであることや、ここにいる理由も思い出せない欽次は、彼をはねたサラリーマンの戸川や情報屋の尾灯を部屋に監禁していたこともすっかり忘れている始末。やがて、自らの境遇をおぼろげながら悟り、彼は愕然とする。弟分たちの手前、やむなく適当に話を合わせるが、襲撃作戦決行の時は否応なく迫ってきて。
中年のヤクザ、怪しい情報屋、まじめなサラリーマンと、立場も利害関係も一致しない三人の男たちが、期せずして立たされることになった逆境で、奇妙な信頼関係を築いていくという、いわゆる男の友情の物語である。漢祭りたる由縁は、ここだろう。
ここのところのKAKUTAの充実ぶりそのままの舞台で、役者たちも余裕でいい芝居をしている。初演を観ていないが、今回の方がおそらくいい形でこなれた仕上がりになっていることは想像に難くない。
ただ、今のKAKUTAは新作が非常に楽しみな劇団のひとつ。シチュエーションコメディ的なネタの本作を、あえて再演する意図が、わたしにはちょっとピンとこない。さまざまな意味で充実してきている時期だけに、失敗を覚悟で、思い切っての新作(またはせめて意欲的な改訂版)をぶつけてきてほしいというのは、観客のわがままだろうか。(125分)
■データ
男たちをしっかりと立てる女優陣が素晴らしかったソワレ/三軒茶屋シアタートラム
6・18〜6・25
作・演出/桑原裕子
出演/若狭勝也、成清正紀、川本裕之、原扶貴子、高山奈央子、大枝佳織、松田昌樹、馬場恒行、桑原裕子、鈴木歩己、凪沢渋次(ナギプロ)、奥田洋平(青年団)、神保良介、青山勝(劇団道学先生)