(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ネムレナイト2008」大人の麦茶 第15杯目

人気のレパートリーのようで、今回が再々々演とのこと。(ちなみに初演は1999年だから10年前のことだ)お馴染みのアイドルの出演もあって、紀伊國屋ホールは連日大入り、前売りだけでソールドアウトの日もあったらしい。
お寺の本堂に現れては、歌を歌ったり、川柳を詠んだりと、賑やかな3人の陽気な幽霊たち。そこに、そこにトラン(柴田あゆみ)という謎の少女が加わるが、やけにネアカな彼女もたちまちその仲間入りする。
ある晩、ひとりの未亡人がお寺を訪ねきた。失意の底にあるようで、和尚のエッセイはしきりに慰めるのだが、この世にまったく未練がないのか、あっさりと自殺を遂げてしまう。実は、幽霊たちのひとりが彼女を気に入り、霊界へと引き込んでしまったのだった。しかし、人間界では彼女の死は事件となって、大騒ぎ。刑事が乗り込んできて、エッセイに殺人容疑がかかり、大変なことに。
大人の麦茶を観るのは二度目で、前の「外は白い春の雲」@「劇」小劇場は、物語性を重視した作りで、演劇的なケレン味はほとんどないという印象だった。しかし、手練の役者も多く、話の面白さに十分な見ごたえがあった。その印象は、今回も変わらず。最初の10分間こそ、紀伊國屋ホールという広さから来る不安が頭をよぎるが、やがて物語の歯車がきちんと噛み合い、いいテンポで廻り始める。そうすると、たちまち物語は客席に向けて吸引力を発揮していく。
特に、生身の人間には見えない筈の幽霊たちが見えるツバキという人物の登場が起点となって、登場人物たちの人間(幽霊?)関係が明らかになっていく終盤はなかなかドラマチック。謎解きの物語としても見ごたえがある。彼らのレパートリーの中でも、本作が何度も再演される理由が十分に伺える。
芝居好きからはやや冷めた捉え方をされることもある大人の麦茶だが、この過剰なロマンチシズムはわたくし的にはかなり好みだ。(110分)

■データ
とはいえコアな演劇ファンがほとんど見当たらぬ客席の居心地がちょっとしんどいソワレ/新宿紀伊國屋ホール
6・18〜6・22
作・演出/塩田泰造
出演/池田稔中神一保並木秀介、和泉宗兵、尾上綾華柴田あゆみ(メロン記念日)、大河元気、林修司(ルドビコ★)、森実友紀