(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「すすめ!!観光バス」動物電気2008年初夏公演

政岡泰志、小林健一、辻修の3人の出演作には、嫌と言うほど(失礼)遭遇しているのだが、実は動物電気を観るのは初めて。93年旗揚げから15年というキャリアを誇る彼らが、久しぶりに小さな駅前劇場に戻っての公演。
風光明媚な湖くらいしか見所のない鄙びた観光地。湖畔に佇むホテルに、富永家の三人は一家水入らずの旅にやってきた。定年を迎えた父(小林健一)、賑やかだが家族思いの母(政岡泰志)、そしてつい最近会社を辞めてしまった息子(姫野洋志)。険しい山道をさんざん送迎バスで揺られて、一行はやっとホテルに到着した。
マネージャーのしょう子(田中あつこ)以下スタッフに迎えられ、卓球やったり、温泉入ったりで、くつろぐ一家。何かというと仕事のことを心配する母親に、息子は苛立ったりするものの、若いカップルや合宿にやってきた大学生らとともに、家族は楽しい時を過ごしていた。しかし二日目、とんでもない事件が起こった。父親が、なぜか遊覧船から湖に転落してしまったのだ。
いやぁ、これは和みますね。毒もほどほど、温かさもいい塩梅で、飛び道具を交えた笑いも心地よい。お話自体は、ちょっと大げさにいうなら家族の再生の物語と言えなくもないが、基本は大衆演劇のベタな乗り。しかし、それでいて家族関係の機微を政岡泰志らが実に細やかに演じているなど、胸に響くものがある。
とまぁ、初見のわたしには新鮮だったけど、おそらくは偉大なるマンネリズムでもあることは想像に難くない。しかし、この暖かい笑いには、心を和ませる滋味が確かにある。すぐに飽いてしまう可能性もなきにしもだが、それを目当てにしばらくはこの劇団に足を運んでみたいという気になった。
ところで、芝居の入りがコントというのも、なかなか味がありますね。チェルフィッチュなどが一瞬頭をかすめたりして、その対極ともいうか、大胆不敵な方法論に感心しました。なるほど、動物電気にはぴったりの入り方だよなぁ。(110分)
■データ
恒例らしい換気タ〜イムも有り難いソワレ/下北沢駅前劇場
6・6〜6・15
作・演出/政岡泰志
出演/小林健一、辻修、森戸宏明、伊藤美穂、鬼頭真也、松下幸史、森山夕子、姫野洋志、政岡泰志、田中あつこ(バジリコFバジオ)、谷部聖子、國武綾(斉木まなは降板)、吉井憲一、二面由希、古家ウィリアム康、田島慶太、千葉綾、松下晃治