(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「立川ドライブ」THE SHAMPOO HAT 第22回公演

「東京」(赤坂RED/THEATERプロデュース)、「ねずみ男」(青年座)に続く今年3本目の赤堀雅秋作品。このあと、3軒茶屋婦人会の「ウドンゲ」があって、秋には劇団の次回公演まで控えている。いやはや、どこまでやるんだ、今年の赤堀雅秋
交番勤務のしがない警察官(赤堀雅秋)が、場末のキャバレーでひとりの女性(坂井真紀)に恋をした。彼女の方に特別の気持ちはなく、男に見せた親しみや優しさも、飽くまで仕事としてのものだった。しかし、男の一途な思いは、やがてストーカー行為へとエスカレートしていく。
昨年、マスコミを賑わせた実際の事件をもとに、舞台劇として再構成した作品と思しい。犯人と被害者らの日常を掘り下げ、こうであったかもしれない、という事件の背景をいくつかのエピソードで浮かび上がらせる。
主役を演じる赤堀と坂井の熱演、脇を固める役者たちの濃やかな芝居もあって、ありふれた出会いが、やがて沸点へと向かって緊張感を高めていく。ただし、THE SHAMPOO HATの公演としては、正直言って物足りない。現実の事件とのシンクロ度が高いせいか、すべてが予定調和に思えてしまうし、事件の顛末を冒頭のシーンにもってくる演出も、本作ではマイナスに作用している。
前作「その夜の侍」にもその傾向があったが、THE SHAMPOO HATの本公演では、役者赤堀雅秋に焦点を合わせて公演を行っているように思える。それはそれでひとつの方向性だとは思うが、しかしその結果、彼らの得意とする土臭くも面白い群像劇や人間模様が後退してしまうのは、いかにも残念だ。(130分)
■データ
テレビ東京の深夜ドラマでもうひとつの「立川ドライブ」が放映されたと知ったマチネ/三軒茶屋シアタートラム
5・29〜6・8
作・演出/赤堀雅秋
出演/坂井真紀、藤原利映(グリング)、野中隆光、日比大介、児玉貴志、多門勝、黒田大輔、滝沢恵、吉牟田眞奈、梨木智香、長尾長幸(劇 26,25団)、赤堀雅秋