(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「プリマ転生」ロリータ男爵

2003年に中野ザ・ポケットで初演した作品の再演。初演時より歌曲を増やし、上演時間も30分以上伸びたという事前の触れ込みもあって。
バレエ発表会の当日、会場へと向かう生徒たちを乗せたピエールバレエ教室のバスは、橋から転落。付き添いの教師を含めて、全員が死亡してしまうという惨事になった。しかし、発表会に出たいという一念からか、彼女たちは成仏できず、幽霊として地上に留まることに。生者の命と引き替えに再生のチャンスがあるとみるや、我こそはと猛烈な特訓を開始する。
しかし、生き返ることができるのはたった一人。さらに、ダンスのセンスが抜群の黒人少女が現れたことから、バレリーナたちの間で競争心はヒートアップし、嫉妬心はメラメラと燃え上がる。一方、再生を夢見て、長い間雌伏のときを過ごしてきた人物が、実はもうひとりいて。
過去にこの劇場を使った経験もあるようだが、ここ数作の印象では、広い空間にやや不安ありだと個人的には心配していた。しかし、それは杞憂だったようで、雛壇形式に広い舞台を使い、へなちょこなバレーをこれでもかと繰り広げる演出も功を奏し、劇場を使いこなすという点ではほぼ合格点といっていい。
2時間を越えるとさすがに間延びした印象は否めないが、懐かしの大映ドラマや少女マンガを彷彿とさせるベタな展開と、賑やかなバラエティの乗りで、それをなんとか乗り切ったという印象。新井友香や吉田麻生などの客演を贅沢に使ったことも正解で、多彩な登場人物たちのひとりひとりに個性が光っていたのが良かった。プロとおぼしき4人のバレリーナたちの起用も正解。
冒頭で、生徒たちの死体がドサドサッっと落ちてくるくだりがショッキングかつ秀逸で、一瞬にして物語に引き込まれた。見事な演出に感心した。(135分)
■データ
例によって役者松尾マリヲの強引な前説がどうも馴染めないソワレ/吉祥寺シアター
6・4〜6・9
作・演出/田辺茂範
出演/大佐藤崇、斉藤マリ、役者松尾マリヲ、加瀬澤拓未、丹野晶子、草野イニ、斉藤麻耶、福屋吉史、松浦羽伽子、足立雲平、白井暁子、吉田麻生(むっちりみえっぱり)、新井友香(劇団宝船)、稲垣博子、清水俊樹、森知行、濱井海、大長紗希子、首藤まゆら、野村早希、今村優子、津久井亜以、田辺茂範 
映像出演/森田ガンツ(猫のホテル