(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「役に立たないオマエ」ブルドッキングヘッドロックvol.14

「わが闇」でも終盤に顔を出し、ヤクザなキャラをなかなかいい味で演じていたNYLON100℃喜安浩平。彼が脚本、演出を担当するブルドッキングヘッドロックほぼ1年ぶりの新作は、2公演連続企画の学園もので、今回はそのパート1にあたる。
放課後の美術室に集合している高校美術部のメンバーたち。学園祭への参加にあたって、クラブの責任者を決めるのが今日の議題だ。なんだかんだで、大役を引き受けることになった主人公の新田間(喜安浩平)。そんな彼には、ちょっとした思惑があった。同じ美術部員の陶山夏絵(永井幸子)にいいところを見せて、ガールフレンドにしようというのだ。
そんな新田間に手を貸そうと言ってくれたのは、親友の嶋(小島聰)。その嶋には、最近ガールフレンドが出来たばかり。親友のためだったら何でもやるという味方を得て、新田間はあれこれ策を練る。しかし、学園祭の当日、とんでもない事件が起きる。陶山が精魂込めて制作していた裸婦を描いた油絵が忽然と消えてしまったのだ。部員たちは、作品と行方の知れなくなった彼女を探して、必死に学園内を駆けまわるが。
全部で高校生の登場人物が17人もいるのだが、そのひとりひとりの佇まいがしっかりしていて、濃い目から目だたない者まで万遍なくリアルな存在感が吹き込まれているところにまず感心させられた。実は、唯一、山口かほりが二役を演じているのだが、この姉弟に何故かとてもぐっと来るものを感じた。キャスティングの妙味とはこのことかもしれない。
ありふれた日常の中にも、体育会系と文化系の違い、もてるとかもてないとか、大学受験の悩みなどがしっかりと織り込まれ、そこからは多感な年頃の織り成すナイーブな人間模様がしっかりと浮かび上がってくる。非日常を出現させるイベントとして学園祭が使われており、そこで登場人物たちが一気に狂騒に走るのもお約束とはいえ上手いところだ。人生は前途洋々ではあるが、実は不安もあるところをちらりと覗かせる教師の絶望と悪意も、スパイシーな緊張感を生んでいる。(110分)

■データ
パート2への繋がり方が楽しみなソワレ/新宿御苑サンモールスタジオ
5・22〜6・1
作・演出/喜安浩平(ナイロン100℃)
出演/小島聰、深澤千有紀、三科喜代、西山宏幸、寺井義貴、篠原トオル、永井幸子、猪爪尚紀、馬場泰範、山口かほり、藤原よしこ、喜安浩平、清水洋介(SpaceNoid) 、岩堀美紀、黒木絵美花、伊藤聡子、佐藤幾優(boku-makuhari)