(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「最北端の姉妹 次女のフクロウ」バジリコFバジオ

初期江古田ストアハウス時代の作品を4年ぶりに大幅リニューアルしての再演。「次女のフクロウ」と「長女のヒグマ」はバージョン違いではなく、1ヶ月という時間の経過を挟んで語られる、人物や舞台を同じくしながらもそれぞれが独立したお話である。
最北端の地、カフカ島の診療所。看護婦のマサエは、"フクロウ"と呼ばれる男を待っていた。彼には不思議な能力があって、現実を夢の中の出来事に変えてしまうという。マサエには、かくまっている夫を無実の人とするという密かな目的があった。
ところがこのフクロウ、とんでもない奴で、約束は破るわ、悪夢を見せるわなど、やりたい放題を尽くす。そんなところに、凍傷で少女が診療所に運ばれてきた。彼女もフクロウの悪戯で、夢と現実が逆転してしまったらしい。やがてマサエは、少女が15歳に成長した自分の娘クロエだと知る。現実を夢にすることは娘を失うことと悟ったマサエは、究極の選択を迫られることになるが。
いかにもバジリコらしいぶっ飛んだ設定。ディテールやガジェットも、彼ららしいオフビート感覚が溢れている。観客を引きずりまわすかのような展開は、ジェットコースターの乗り心地で、前作「AC/DC」の成果をきちんと持ち越していて、頼もしい。
ただ、悪夢と現実が交錯する物語は、やや客席からは飲み込みにくいところもあって、さらなる工夫を望みたいところだ。現実から逃れると娘も失ってしまうという状況でマサエが選択を迫られる場面で、娘のクロエが口にする答はなかなかに感動的。「長女のヒグマ」へと繋がっていくエンディングも上手いと思う。(100分)

■データ
人形劇の前説も達者な楽日マチネ/下北沢OFFOFFシアター
4・18〜4・22
作・演出/佐々木充郭
出演/木下実香、今藤洋子、田中あつこ、近藤佳秀、武田諭、武藤心平(7%竹)、豊田裕樹、本田留美(負味)、三枝貴志、横島裕(もざいく人間)、中込恭史
声の出演/豊田裕樹、横島裕