(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ぐるぐる溺れ」はなムスび第2回公演

王子駅前のpit北/区域に足を踏み入れたのは初めてのこと。いやぁ、すごい劇場ですね。迷宮のような狭い通路を胎内巡りのように下へ下へと降りていくと、小さな劇場スペースに到着。キャパも小さいし、天井も低いけど、下北沢の楽園に近い感じ。観たのは、2007年ワークショップで出会った三人が結成した劇団はなムスびの第2回公演。
ほかならぬ友人のカヨコからの呼び出しとあって、台風が直撃する中、ナツミとイチコは彼女の住む世田谷のマンションへと向かった。しかし、豪雨でびしょ濡れになった彼女らを出迎えたのは夫のモトアキで、カヨコは外出中だという。なんでも、カヨコはマンションの地下に墓を作っているという。用向きというのは、その手伝いをしろということらしいのだが。
はなムスびは、あまり若いとはいえない三人の女優さんからなる劇団で、正直まだまだ素人臭さが抜けないが、ひとりひとりの個性は役割分担がしっかりしているというか、ナツミ役の井筒晴美を中心に役者のカラーが分かれていて、悪くない。本作に関していえば、暖かい目で見てやってください、という前説があったが、確かにその域を出るものではない。
良いなと思ったのは、台風の目に入ったときに登場人物に去来する、一万メートル上空から私を見ている私、というイメージ。それが長じて、自分らしさって何?と発想が膨らんでいくわけだが、残念ながらそれを芝居として表現するには、まだまだ技量が追いつかない。公演を重ねながら、腕を磨いていってほしいと思う。
なお、北区が実施している文学賞内田康夫ミステリー文学賞を受賞した田端六六さんがゲスト出演し、スリープウォークの怪演を披露している。(80分)

■データ
青空をイメージしたブルーのぐるぐる鉛筆をもらったマチネ/王子pit北/区域
作/第二次谷杉 演出/津田ますひろ
出演/井筒晴美、あべれいこ、しんぽたまみ、矢羽々昭幸(浅井企画)、滝野洋平(劇団俳協)、里中海奈(劇団俳協)、田端六六