(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

[演劇]「刺青姫」劇団破戒オー!!!ハルランマン第七回公演

劇団破戒オー!!!は、大阪芸大のメンバーで2002年旗揚げ。その後、東京へ拠点を移して、昨年までに都合6回の公演を行っているようだ。ほぼ1年ぶりとなる今回の公演は、王子小劇場への進出作。
1997年関西のどこか。学園祭を明日に控え、生徒たちが楽しげに準備を進める某中学校。今朝からわが子の行方が知れないと、担任の教師にすがる夫婦が職員室に。なんと、五日前からその家の長男優も行方不明になっているという。そこに、新聞部の部長が、校門に落ちていたという赤い画用紙に書かれた奇妙なメッセージを届けにくる。そこには、何らかの犯行を告げるような不吉で意味不明な内容が記されていた。
一方教室では、餌をやっていた野良猫の姿が見えないと女生徒が騒いだことから、クラスを挙げて探すことになった。やがて、ビニール袋に入った血まみれの猫の死体が、教室にあったカバンから見つかる。カバンの持ち主は、イジメを受けている転校生の三浦だった。さらには、行方不明だった優が、大鋏で首を切られた死体となって発見され、三浦は逮捕されてしまう。しかし、間もなく真犯人は別にいたことが判る。
映像を使ったり、ダンス(専任のダンサーがいる!)を差し挟んだり、はもとより、妄想場面や場面転換にも面白い工夫があって、あの手この手と手数が多いのは○。真犯人逮捕の映像を挟んで、十年の時を隔てる二部構成の物語も、十分に見ごたえがある。おそらくは満を持しての公演なのだろう、劇団の若さと熱意が伝わってくる意欲的な舞台に仕上がっている。
しかし、一方では注文をつけたくなる点もいくつかある。まずは、後半を牽引する刺青マンという存在だが、装置としては機能しているが、存在としては説得力がない。熱狂する若者たちに囲まれているが、どうもそのあたりが説明的で、時代のカリスマとしての存在感が伝わってこない。
また、終盤、出所した真犯人が被害者宅を訪れ、十年前の少年殺しの真相を語るクライマックスは、緊張感、期待感ともに高まる大きな見せ場なのだが、その内容がサイコスリラーとしてはいかにも定石。そのあとのツイストを含めても、意外性に乏しいところが物足りない。
その挙句に、あのエンディングでは、観客ははぐらかされた思いを抱かざるをえない。いや、脱力だったり、シュールだったりというぶっ飛んだ幕切れというのはもちろんアリなのだが、事件の真相が月並みだった分、もう少しテーマそのものに拘った幕の下ろし方をしてほしかったと思う。
と、文句ばかり垂れたが、エネルギッシュで、意欲的な取り組みには大いに好感をもった。刺青=入れ墨=入れ罪の言葉遊びや、現実の事件に取材した題材、苛めの構造を読み解く鋭さなど、買えるところも多く、期待のもてる劇団だと思う。個人的には、柿喰う客などに出ている伊佐美由紀が、物語の進行とともに存在感を増していくのにほれぼれした。(120分)※13日まで。

■データ
どしゃぶりの雨が止まなかったソワレ/王子小劇場
4・9〜4・13
作・演出/藤丸悠理
出演/村尾俊明、高山健司、照喜名克逸、文字山慎、飛山真利子、藤丸悠理、戸田正範(trictrac)、神山遥(サンオンエンターテイメント)、瀬口昌代(?マウスプロモーション)、長山航太、鴇田智美、伊佐美由紀、大谷美貴(テアトルアカデミー)、柳裕也、山家谷篤、釜野真希
ダンス/山崎美佳、江藤裕里亜、氏家優希(サムライプロモーション)