(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

[演劇]「春を待つ」味わい堂々第2回公演

劇団のホームページによれば、味わい堂々は2006年10月頃に浅野千鶴、宮本奈津美、岸野聡子の女性三人により結成。わたしは、バジリコFバジオの『AC/DC WORLD'S END SCHOOL GIRL!!!!!』に宮本がいい感じで客演していたのを見かけ、なぜか気になる劇団として刷り込まれることに。
バス停前で、フった、フラれたと、それぞれの取り巻きを交えてもみ合うスケ番と番長の高校生グループ。それから時は流れて、とある会社で、毎晩のように残業するふたりのサラリーマンがいる。ワーカホリックの先輩を気遣う新人だが、しかし先輩の方はいつも心ここにあらず。帰宅しても十年連れ添った妻には、何を話しかけられても上の空の返事しかしない男。
一方、どこか特別の場所にいる若い男女。恋人というのでもないようだが、喧嘩するほど仲がいい、を地でいくようなふたり。男は、女をからかったり、叱ったり。女の方は、ときたま家に携帯から連絡をいれている様子だ。
お話は、サラリーマンたちと男女の話が交互に語られ、ときおり何かを待っていると思しき狂女がいるバス停のシーンが差し挟まれていく。サラリーマンの妻が姿を消し、ずっと家を空けていた少女も帰宅する旨父親に連絡をするあたりから、劇的に物語は展開していく。
ビンゴ!この劇団はマークだ。お話、見事ですね。一見、なんの脈絡もないエピソードが繋がる終盤が素晴らしい。その繋がり具合も、ちょっとした感動を孕んでいるところが、またいい。練られたプロットが、しっかりと組み立てられていると感心させられた。
登場人物が、まるでインタビューされているかのように身上や心情を語るアイデアも悪くないが、映像の使い方にひと工夫ほしいところ。それよりも映像では、アニメーションを使ったタイトルが非常に印象的で、短いものだがそれだけで立派な作品になっていると思う。機会あれば、映像作品としてのリリースを望みたいところだ。
劇団員も客演陣も、いい役者が揃ってますね。可愛らしくも、しっかりと存在感のある女優陣に、いい感じで癖のある男優陣。夏に予定されているという小公演がとても楽しみ。(85分)

■データ
中央線の事故で開演がやや遅れたマチネ/中野スタジオあくとれ
4・3〜4・6
作・演出/岸野 聡子
出演/川口恵理、井黒英明、吉田海輝(サンチャゴ)、神戸誠治、浅野千鶴、宮本奈津美、岸野聡子