(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

[演劇]「顔よ」ポツドールVol.17

早稲田演劇倶楽部出身、スタートを切ったのは96年だから、今年で干支も二順目に入るポツドール。ユニット内の強力なライバルである女版(溝口真希子が作・演出を担当)の第二弾「女の果て」@赤坂レッドシアターを挟んで、ほぼ一年ぶりの本多劇場である。
中央の通路の両側左右に並ぶ二棟の建物。ともに二階建てで、上手はアパート、下手はそのオーナーの個人宅だ。アパートの上下階にはそれぞれ若い男が住まい、オーナー夫妻宅2階の窓からは、顔に包帯を巻いた女性の顔が見えている。実は、包帯の女性はオーナー夫の妹で、包帯の下は火傷の傷跡だった。合コンでの悪ふざけが火傷の原因で、ライターの火をかざした張本人の青年は、責任を感じて毎日謝りにやってきている。
一方、アパートの2階にはイケメン、1階にはぱっとしない男がそれぞれテナントとして暮らしている。引き篭もり気味のイケメンには仲のいい弟がいて、美人のガールフレンドがいるにもかかわらず、顔面の皮膚病で弟は悩んでいた。1階の男にも着いたり離れたりしている恋人がいたが、美人でないことを恥じて、彼女のことを友人にも隠している。
舞台上に上下左右の田の字で四つの部屋が並ぶセットは「恋の渦」と基本的には同じ構成。たまたまわたしの席が前方だったということもあったのかもしれないが、やけに臨場感があったのは、セットを舞台前方に作っているのだろうか。(事実、A列は空けていた)全体が7つのチャプターからなっていて、章を追うごとに四つの部屋の壁が取り払われ、室内でのドラマが順々に露わにされていく。
生まれつきだったり、後天的な事情があったりと、事情はさまざまだが、顔の美醜をめぐって、持っている者の驕りと、持たざる者のコンプレックスのドラマがあけすけに語られていくのは、いつものポツドールの乗りである。ところどころに差し挟まれるセックスと暴力の描写が、ややもすると過激に走るのも、もはやお約束に近く、以前ほどの衝撃は感じられない。
終幕間際、登場人物たち都合四組のカップルがエゴと心の醜さを剥き出しにするくだりは、顔は体の一パーツに過ぎない、そして結局はそれもセックスと結びつく、というこれまたポツドールらしい結論がちらつき、ついつい早合点しそうになった。しかし、そのあとに待ち受けるワンシーンには、正直意表を突かれる。一見、単なるオチにも思えるが、これはもう物語そのものの価値観を転換させるに等しい仕掛けで、観客にテーマを深く印象づける。
人間顔じゃない、というのは誰もがわかっているが、でもなぁ、と完全に割り切れないのが世の常。そんな顔の美醜をめぐるモヤモヤを、ポツドールの定石を自ら囮に仕立てる技ありの技巧で、見事に表現した作品だと思う。ポツドールに関して言えば、個人的には女版の濃やかな人間描写と群像劇の巧みさを贔屓にするわたしだが、サプライズエンディングを効果的に使った今回の三浦大輔は、天晴れだと思った。(150分)※13日まで。

■データ
物販の一切ないロビーも珍しいなと妙に感心した初日ソワレ/下北沢本多劇場
4・4〜4・13
作・演出/三浦大輔
出演/米村亮太朗、古澤裕介、井上幸太郎、脇坂圭一郎、岩瀬亮、横山宗和、後藤剛範(害獣芝居)、白神美央、内田慈、松村翔子(チェルフィッチュ)、片倉わき、安藤聖、新田めぐみ、梶野晴香(国分寺大人倶楽部)