(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「LIVE発電所」親族代表

コント作家の故林広志のもとで出会った嶋村太一竹井亮介野間口徹が結成したコントユニット親族代表。昨年公演がなかったのは、個々のスケジュールが忙しかったからか。嶋村がオートバイ事故で骨折し降板というピンチに、4人のゲスト招請で臨まねばならない窮地の公演である。
動物園から脱走したゴリラをめぐるふたりの飼育係とゴリラ似(?)の園長の噛み合わないやりとり。やがて市民の安全のためにゴリラ射殺の命令が下されるが。(「ゴリラ」)地下鉄ホームに転落した少女を決死の行動で救い、自分の片足を失ったオリンピック選手。しかし、彼を待っていたのは痴漢の容疑で。(「日本代表の男」)深夜のコンビニでタバコの銘柄を間違って手渡された男と店員。店員が謝らないことで、苛立ちをつのらせる男だったが。(「コンビニ(または謝罪について)」)女の部屋で鉢合わせしたふたりの男。二股をかけていた彼女はちっとも悪びれず、男たちも堂々たる彼女に惚れ直したりして。(「ラブ・トライアングル」)とある放課後、同じクラスのいじめられっ子ふたりに起きた不思議な出来事の顛末は。(「虫けらでした」)。
え、こんなに面白かったっけ、親族代表。わたしは二度目だが、前回の「(りっしんべん)」は、1編(福原充則作だった)を除くと、いまひとつだった印象が強い。でも、今回は5編ともが面白い。竹井と野間口の充実もあるのだろうが、一作ごとに変わるゲストがまるで料理のスパイスの役割を果たしており、舞台上の空気に変化をつけていることも大きい。
コントごとの作者名は、終演後に出口で配られるセットリストで知らされることになるのだが、わたしが一番笑えたのはケラの作でした。やっぱり登場人物たちのやりとりが最高。あと、リストを見なくても、「コンビニ」は岩井秀人の顔を思い浮かんでくる作品だった。シュールな展開の「虫けらでした」も、苛めという素材の陰湿さをあっさりと吹き飛ばす意表をついた展開に作者らしさがあって、満足。
崖っぷちのふたりの頑張り、そしていい味出してるゲストたちと、リーダー格の嶋村の降板がプラスに作用した恰好の公演になったのはちょっと皮肉だが、お笑い好きなら観て損のない舞台だ。(90分)※24日まで。

■データ
某アニメとシンクロするオープニングから笑わせるソワレ/新宿シアタートップス
2・14〜2・24
作/「ゴリラ」川尻恵太、「日本代表の男」ブルースカイ、「コンビニ(または謝罪について)」岩井秀人、「ラブ・トライアングル」ケラリーノ・サンドロヴィッチ、「虫けらでした」福原光則 
演出/福原充則(ピチチ5)
出演/竹井亮介野間口徹、犬飼若博、小村裕次郎、三浦竜一(ピチチ5)、植木夏十NYLON100℃