(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「お茶とおんな」 山の手事情社 EXTRA企画公演

実力派の女優たちによる肩の力を抜いた公演という先入観を抱いてました、勝手に。しかしよ〜く考えてみると、この三人が顔を合わせて、ただのガールズトークで終わる筈もなく。案の定、しっかりと女の性(さが)と業(ごう)の深さを見せつけられる濃密な1時間半。
真ん中に小さなテーブルと3脚の椅子がある部屋。読みかけの本やクッション、ぬいぐるみなどがあちこちにころがっている。テーブルの上には、セットされたコーヒーメーカー。コーヒーが入り、さて、気のおけない女三人の世間話が始まるが。
つきあっている相手に冷める瞬間とか、男との別れ際の思い出とか。年齢にかかわりなく、女性の話題は恋が定番のようで。しかし、互いに信頼している女たちのやりとりは、姦しいというより、むしろポツリポツリと静かに深まっていく。
最初、「あれ?」と思ったのは、普段着仕様と思われる三人の衣装に、それぞれ大きく文字が入っていること。読んでみると、倉品=メディア、大久保=定、水寄=お七とある。そう、三人の女たちには、女王メディア、阿部定八百屋お七という時も場所もバラバラだが、いずれも男をめぐるスキャンダラスな事件を起こした悲劇のヒロインたちが重ねられているのだ。
三人の茶飲み話に、悲劇のヒロインたちのモノローグと寸劇が割り込み、三人の女たちと歴史上のヒロインとをシンクロさせていく。そこから女性という存在の普遍の姿を垣間見せるあたりは、さすが。一瞬にして、雑談の緩い空気を緊張感に満ちたものに変える三人の女優の力にも惚れ惚れさせられる。
ゲストに男優を招き、男女の対比をちらりとのぞかせるアイデア自体は悪くないが、一人芝居は蛇足だと思った。ちらしやパンフには、おんな祭り第一弾とあるので、次回以降もあるんですね、と期待を込めて受け止めておきます。(105分)※10日まで。

■データ
ティーバッグに数字を刷り込んだ洒落た番号札がナイスなソワレ/下北沢小劇場楽園
2・7〜2・10
作・構成・演出・出演/倉品淳子、大久保美智子、水寄真弓、北沢洋(花組芝居)※日替わりゲスト
監修/安田雅弘