(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「霊感少女ヒドミ」 小指値

どこにでもある平凡な日常でも、彼らがすくいあげるとその一瞬が新鮮に思えてくる小指値。活動休止の噂が流れる中、アゴラ劇場への進出作は、ハイバイが2005年に「ポンポンお前の自意識に小刻みに振りたくなるんだポンポン」とのカップリングで上演した「霊感少女ヒドミ」をリメイクで。
新宿のドンキで、シャンプーを選ぶ少女ヒドミ。彼女に近寄り、ひとりの少年が声を掛ける。「何探してるの?」そんな、ありがちで、ありきたりな一シーンから始まり、二人はあっという間にいまどきの若者たちの恋愛関係に。デートにメール、そしてホテルでの一夜。恋人ヨシヒロの出現により、ヒドミのときめく日々が始まる。
しかし、彼女にはちょっとした秘密があった。国道16号線沿いにある彼女のマンションには1階にコンビニがあって、深夜決まってヒドミに話しかけてくる男がいた。交通事故で死んだ店員の幽霊だった。しかも、彼の血まみれの姿は、ヒドミにしか見えない。店内をつきまとい、彼女を口説こうとする幽霊だったが。
前半はボーイ・ミーツ・ガールの高揚感で気持ちを掴み、中盤以降はありがちな恋の顛末を早回しで見せ、観客を引っ張っていく。お洒落でポップな装いの下には、意外なまでにしっかりとした物語性の土台がある彼らだが、今まさに乗りに乗っている勢いとも相俟って、見ごたえ十分だ。
まだ公演中なのであからさまには書けないが、ヒロインの魅力を数倍にしてみせる仕掛けもあっぱれ。そもそも、役者たちが持っているダンスのセンスの良さや、豪腕とでもいうべき身体能力の高さも、随所に見せつける。中央線沿線の東京を俯瞰させる舞台装置にしても、携帯メールのやりとりを見せるアイデアも彼ららしさいっぱいで面白い。
ただひとつ残念なのは、最後のモノローグの場面で、役者の出来や演出を含めて、初日の夜はまだ未完成に思えた。全体を括り、幕が降りたあとの余韻へと繋げる大事な場面だけに、もう少し際立った何かを見せてほしいと思う。(75分)※9日まで。

■データ
活動休止の噂の真相が袋入りプログラム(50円)で判明した初日ソワレ/こまばアゴラ劇場
2・7〜2・9
原作/岩井秀人(ハイバイ) 作/北川陽子 演出/篠田千明
出演/初音映莉子、三浦俊輔、NAGY OLGA、大道寺梨乃、中林舞、野上絹代、山崎皓司