(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「残魂エンド摂氏零度」芝居流通センターデス電所第19回公演

大阪(精華小劇場)でのロングラン、そして東京でのザ・スズナリ進出と、劇団のステップアップとともにそろそろ否応なく真価を問われてきているデス電所。再演だったとはいえ、前回公演からさほど間を措かない新作公演である。
おそらくはそう遠くない未来のお話。戦争やら何やらで、世界の国はたった18カ国しかなくなってしまっている。そのひとつで暮らす少年のリイチ(丸山英彦)は、ネット接続用のロボット〈ニア〉(山村涼子)を両親に買ってもらった。その高価なインターフェイスで世間との繋がりを保つ彼だが、リアルでは重症の引き篭もり状態が続いている。
国土は戦争状態で、ポロロッカを名乗るテロリスト集団が破壊活動を行っている。やがてポロロッカはリイチの町にも迫り、避難勧告を携えて玄関に現れた役所の男(福田靖久)は、執拗に退去を説く。一方、隣人で借金に苦しむ女コッポラ(田嶋杏子)は、色仕掛けで彼の財産を狙いに。〈ニア〉は、必死にリイチの世界を守ろうと奮闘するが。
三面に都合9つの扉がならぶ真っ白な舞台。シンプルだが、思わせぶりなところもあって、期待が高まる舞台装置がまず目をひく。それに、ロボットと主人公、すなわち守る者と守られる者の紙一重の関係を物語の中心に据えたのも、この作者(竹内佑)らしい面白さがあると思う。
しかし、その仕上がり具合は、正直微妙だ。冒頭に重要なシーンがあって、それが終盤の逆転につながっていくのだけれど、いまひとつ伏線として機能しきっていないうらみがある。いや、そこまでキッカリと見せる必要はないのかもしれないが、この本作最大のカタルシスを上手く見せられないのは、どう考えても損だと思う。
もうひとつは役者たちの力量で、いまひとつ作品のレベルについていけてない場面がいくつかあった。中盤の役人やテロリストのエピソードが面白くない(ただし竹内演じる3人目のテロリストは愉快)のは、主に演じる役者の力不足ではないか。そんな中で、山村涼子は台詞の力を感じさせる力量があり、健闘しているのだが、その彼女とてあと一歩の華に欠けるきらいがある。惜しい。
生かしきれていないとはいえ脚本の上手さはさすがだし、映像を使った演出の視覚的な面白さも素晴らしいのだが、今回の新作ではいまだそれを十分に生かしきれていない印象。しかし、このハードルを越えた彼らを観てみたい気持ちも実は非常に強い。というわけで、次回も観ます。頑張ってください。
なお、今回も和田俊輔による生演奏の劇伴は最高。彼の音楽的なセンスの良さは、デス電所の貴重な財産ですね。(100分)

■データ
実は前日の古田新太のアフタートークが見たかった雨の日のマチネ/下北沢ザ・スズナリ
1・11〜1・14(東京公演)
作・演出/竹内佑
出演/丸山英彦、山村涼子、豊田真吾、田嶋杏子、福田靖久、米田晋平、松下隆、竹内佑
音楽・生演奏/和田俊輔