(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「crossing 2 program-A」風琴工房PRESENTS

今年6月に続く二度目のcrossingは、不条理劇系の一挙4作品を俎上に。エレベーターを降りると、まず案内の人(笹野鈴々音)から注意を受ける。「受付は舞台上にあります、非常に感じの悪い受付なので気をつけて下さい」、とのこと。おおお、確かに感じ悪い受付(津田湘子)だ。恐る恐るお金を払って、チケットを受け取ると、素っ気なく「空いてる席に座って」と言われて、ともかく着席。
とまぁ、面白い客入れは、実はAプロの2作の一方(2本目)、別役実作「受付」に絡めた趣向だ。自ら心の病を疑うサラリーマンが、会社を抜けてやってきた精神科の受付。しかし、受付嬢は一向に医師に取り次いでくれず、気弱な男はひたすら一方的に彼女から関係のない話を聞かされるばかり。ついには寄付金、角膜の提供、献体安楽死協会への加入などを無理やり承諾させられてしまう。津田湘子は熱演で、不条理というよりはホラーのテイストが漂う。ただし、山ノ井史は、やや苛められのパターンがやや単調か。
もうひとつ(最初の演目)、安部公房の「鞄」は、ときどき中から妙な音が聞こえてくる鞄をめぐる物語。持ち主の夫に尋ねても、中には先祖が入っていると言うばかり。中身が気になって気になって仕方がない妻は、ある日、自宅を訪ねてきた親友に、鞄を開けるのを手伝ってほしいと頼み込んで。鞄そのものを男優が演じるアイデアが楽しい。ふたりの女優のカラフルな衣装も素敵で、小品ながらお洒落な仕上がりは悪くない。(80分)
■データ
いつの間にか外は雨だった20:00の回/渋谷ギャラリー・ルデコ
12・24〜12・30
Aプロ
「鞄−棒になった男 第一景−」
作/安部公房 演出/詩森ろば
出演/松岡洋子、木内美帆、渡邉真二(ダブルキャスト:浅倉洋介)
「受付」
作/別役実 演出/詩森ろば
出演/山ノ井史、津田湘子
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