(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「メリー」国分寺大人倶楽部 Vol.3 クリスマス公演

ポツドール、jorroらのフォロワーの位置にぴったりつける国分寺大人倶楽部。まだまだ未熟なところも目につくけれども、旗揚げから1年の間に3度の公演を行うあたり、意欲的な取り組みには頼もしいところもあって。
出来がいいとはいえない生徒たちが集う三流の予備校。主人公は、勉強の合間に現役で大学に入った友人と電話でおしゃべりしたり、予備校の仲間たちとも適当にやってる毎日。しかし、なんとなく流される日々の裏で、彼の内側には虚無感がつのるばかり。
浪人の緊張感などまったく感じさせない予備校では、クリスマスのパーティなんかも予定されている。教える側もどこかお気楽で、主人公はその中のキュートな女教師と親しく付き合っている。しかし、それとて彼の生きる希望には繋がらないようで、クリスマスの夜に彼は自らの命を絶ってしまう。
前半は、そんなクリスマスに起きた一日の出来事を、今どきの若者たちが繰り広げる日常の中に描いていく展開。つまらなくはないが、言いたいことはまったく伝わってこない。しかし、全編の三分の二のあたりに訪れる物語の折り返し点(主人公の死)を境に、俄然面白くなる。
死んだつもりの主人公が目を覚ますと、それはクリスマスの朝だった。いつものように、予備校のラウンジにやってくる友人や先生たち。そっくりそのまま繰り返される一日、という具合に、同じ一日をやや早回しで反芻するのだ。一回目と異なるのは、周囲が死んでいる主人公のことを無視することで、主人公の前には自分の分身みたいな人物までが登場する。恋人にまで無視され、生前以上の孤独とやるせなさに、身悶えし、苦しむ。
死の虚無感を軽佻な生き方と重ねた面白さともとれるし、自死の無意味さを浮き彫りにした寓話という見方も可能だろう。掘り下げ自体はさほど深くないのかもしれないが、作・演出の機知もあちこちに光っている。主人公の友人をわざわざ高い位置におく演出や、もうひとりの主人公(河西が演じている)が自ら演出者を名乗ったりする場面は、ほほぅ、と感心した。
もうひとつ、客演も含めて女優陣が実に充実した芝居を見せるが、中でもメリー(先生)役の笠井里美の捉えどころない存在感は抜群といっていい。彼女に見放された主人公が、真の絶望に陥る終幕はそれゆえに説得力がある。(110分)

■データ
岩瀬亮のいい加減な予備校講師も光っていた初日ソワレ/王子小劇場
12・21〜12・24
作・演出/河西裕介
出演/太田恵、井龍子、梶野晴香、山下遼太郎、小斉英嗣、河西裕介、菅原達也(ひょっとこ乱舞)、松本慎平(ド・スチール)、横山宗和、大塚麻央、後藤剛範(害獣芝居)、和田菜美子、笠井里美(ひょっとこ乱舞)、岩瀬亮