(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「人間フィルハーモニー」マンションマンション

昨年春の第二回公演「キング・オブ・心中」の向かい風を浴びながら台詞をいい放つ登場人物たちにすっかり心奪われたわたし。横畠愛希子率いるマンションマンションの次回公演を、今か今かと待ちわびておりました。今回、さらに嬉しかったのは、またもや高木珠里の名が出演者名にあること。おお、これで、つまらなくなる筈ないと確信しての駅前劇場入り。
3組の男女の物語。貧乏作家と彼に愛想をつかした不機嫌な妻。初々しくも、初恋の熱狂の渦に巻き込まれる中学生カップル。そして、愛しあってるのに一緒になれない編集者とその恋人。うまくいく恋なんて恋じゃない、を地でいくなぜかうまくいかない恋愛話三題が、交互に語られていく。
屈折感が浮き出たようなエピソードは、今回3倍のボリュームがあるせいもあって、正直やや胃にもたれる。シーンのひとつひとつは笑えるのだが、さすがに気の利いたレトリックも続きすぎると、後半はダレてくる感じがする。
しかし、最後の15分は、またとない素晴らしさに心揺さぶられる。舞台装置優先のマンションマンションの思想が、福原充則の脚本と見事にマッチングし、スリリングなクライマックスを迎える。愛するゆえに結婚できないと尻込みする男を前に、恋人の女が起こす奇跡!これが、台詞の力も、それに舞台上で繰り広げられる水を使った仕掛けも、感動。まさに神がかりだ!
いやぁ、年末にいいものを見せてもらいました。やはり、マンションマンションと高木珠里は最高です。(110分)

■データ
くーっ、仕事さぼってもう一回観たいよんと思ったマチネ/下北沢駅前劇場
12・21〜12・26
脚本・演出/福原充則
出演/嶋村太一(親族代表)、高木珠里(劇団宝船)、チョウソンハ(ひょっとこ乱舞)、富岡晃一郎、根上彩、三浦竜一、横畠愛希子、菊地明香、小森理