(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「俺たちに他意はない」シベリア少女鉄道Vol.18

久しぶりに足を運んだ前回公演(5月の「永遠かもしれない」)で、進境著しい前畑陽平と篠塚茜を観て、またちょっと観てみようかという気になったシベ少のほぼ半年ぶりの新作公演。
昼下がりの喫茶店。5人いる客はそれぞれに待ち人をしている様子だが、そこに今風の女子高校生がやってくる。なんでも、近くで行き倒れ寸前の浮浪者を見かけたそうで、その話をしているところに、その当の浮浪者が店に入ってくる。
しかし、唯一の出入り口であるエレベーターを降り、店内に足を踏み入れるや、男はばったりと倒れて絶命。男の手の中に、誘拐の脅迫状があったことから、店中は恐慌状態に。内容は、店内にいる誰かの知人が誘拐され、身代金を要求するものだった。折悪しく、落雷による停電で店内に閉じ込められた彼らは、もめながらも打開策を相談するが。
誘拐ミステリ風のサスペンスフルな前半に、ある趣向が繰り広げられる後半を継ぐといういかにもシベ少らしい舞台だが、今回は残念ながら成功しているとは言い難い。ある趣向の下らなさは問わないにしても、全体に冗長。とりわけ、前半と後半のバランスが悪い。
シリアスとスラップスティックの落差を演出するため、前者をしっかりと作り込むという狙いは理解できるが、選んだシチュエーションのハードルが高すぎて、前半のドラマの進行が窮々としてしまっている。加藤、吉原といった達者な客演陣も、残念ながら活かせていないうらみがある。
後半のハイライトシーンも、だらだらと長過ぎる。数で勝負しているのかもしれないが、切れがないし、山場が掴めないので、観ていて次第に飽きてくる。前畑陽平と篠塚茜のふたりも、「永遠かもしれない」で演じた漫才コンビのような冴えがなかったように思える。
やはり、前作はフロックだったのだろうか。(120分)※24日まで。
■データ
またしばらくはシベ少と距離をおきたくなった初日ソワレ/赤坂レッドシアター
12・15〜12・24
作・演出/土屋亮一
出演/前畑陽平、篠塚茜、横溝茂雄、加藤雅人(ラブリーヨーヨー)、吉原朱美、豊田浩文、菊池敦美