(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ぷりずむてん」プリズム企画

10回目なので「てん」。わたしは、先の山の手事情社公演でもらったちらしで初めて知りました。「道成寺」でのディープな芝居ぶりを観た興奮が、まだ脳内でさめやらぬふたりの女優を目の当たりにできる格好の機会だと思って。
東急本店、BUNKAMURAの先って感じの会場BASEは、カウンターだけのこじんまりとしたバーで、渋谷というよりは神泉に近くて、駒場のアゴラ劇場からも歩ける距離。カウンターのとまり木と、その前に並べられた席で、定員25名とか。舞台は、役者がすれ違うのやっとといった感じの通路で、客席からは手を伸ばせば役者が触れるし、下手をすると息がかかるほどで、究極の臨場感とはこういうのを言うのだろう。
演目(というか出し物は)、演劇に新ジャンルを開拓する意気ごみの「へぼ劇」(その名の通り、テーマはアニメでショートコント風)、松田さんのスタートレック話、シリアスな会話劇(別れの冬)、メイド喫茶の3つの部屋(ほめちぎり、全否定、役者から選択。この回は全否定)観客参加のワークショップ風3チーム対抗芝居合戦(テーマは、男が絶対に断われない女の口説き文句)、水寄真弓が不思議系アイドルを演じるまゆたりんの世界、倉品淳子が島倉品千代子に扮して前説を語る超大作、と盛りだくさん。
会場に一歩足を踏み入れ、「ご主人さま、おかえりなさいませ」と、メイド服の3人からお迎えの言葉をかけられた瞬間から、まさに濃密な演劇異次元へワープしてしまった感じ。とにかく達者な3人に見とれて、乗せられるうちに、あっという間に2時間が過ぎました。その間、脱力系のお笑いがあるかと思えば、役者の実力をちらりとのぞかせる一瞬もあるし、いつのまにか参加している自分もいたりして、観客をまったく飽かせないのはさすが。
女優さん三人三様の魅力を贅沢に堪能。これで、山の手事情社青年団の芝居がまた一段と楽しみになりました。(120分くらい)
■データ
くじで山の手事情社の小道具(ケロリンの桶)を引き当てた幸運のマチネ/渋谷BASE
12・15〜12・16
企画・構成/水寄真弓(山の手事情社
出演/松田弘子(青年団)、倉品淳子(山の手事情社)、水寄真弓