(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「呪い」ジェットラグプロデュース

ここのところ、ユニークなプロデュース公演に力を入れるジェットラグが、2006年の「M−1グランプリ」優勝の漫才コンビ、チュートリアル徳井義実の初戯曲をとりあげるプロデュース公演。演出、キャスティングも小劇場のお笑い系としては、なかなか豪華な顔ぶれを揃えていて。
新婚とおぼしきラブラブの男女。ふたりは朝の食卓で、夫の好物ナメタケの瓶詰めを妻が買い忘れたことくらいで喧嘩をしたりもするが、それも仲のいい証拠で。ところが、妻が毎日のように見る夢がもとでふたりは離婚の危機に。そしてついに破局を迎えてしまう。
全体は三部構成になっていて、ここまでがそのパート1。やけにコンビニな感じの呪い屋に場面が移り、ああこれは繋がりのないコント集のようなものだなと思っていると、パート2の中盤あたりから、パート1との企みに満ちた繋がりが見えてくる。しかし、さらに次に繋がっていくに違いないと思った矢先、パート3で観客は突然シュールな世界へと連れ去られてしまう。
いやー、観客の意表をつく展開が見事。1と2の繋がりも、そうだったかと感心させられるものだし、3のぶっ飛び具合も愉快だ。この形のない組み合わせは、計算のうえでのものだろうが、観客の先読みを裏切っていく面白さがあると思う。
林健一と竹井亮介の組み合わせは、笑いをとるには鉄板のキャスティングだと予想がつくが、案の定ふたりが出てきただけでやたらおかしい。ゴールデン街劇場という小屋が小さいこともあって、このふたりが夫婦を演じるパート1で、客席はあっという間に暖まった。以後、最後まで笑いどおし。黒坂真美は、悪くないんだが、わたしには単調で煩すぎ。小林のつっこみで随分と救われた感じだ。
本家のピチチ5では、ときに過剰な演出を見せる福原充則も、他人の作品との距離のとりかたは絶妙で、いい形で作品を作り上げている。漫才方面からの越境も、こういう才能、こういう形だったら、大いに歓迎したい。(70分)

■データ
開演前の諸注意が一番怖かった夕方4時の回/新宿ゴールデン街劇場
11・15〜11・18
演出/福原充則(ピチチ5)
出演/黒坂真美、小林健一(動物電気)、竹井亮介(親族代表)