(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「うめたい〜ダメ、時々アイシテル〜」はぶ談戯Vol.11

はぶ談戯は、1999年に穂科エミを中心に結成された。わたしは、ククルカンの「クローバー秋」に客演していた春日和弘の所属劇団として、ユニークなその名を知る。今回が初見だが、カラオケ・ミュージカルらしい、という情報は風の噂で仕入れていた。
何度ダメ男にひっかかっても、懲りないヒメコ(長谷椿)。街中で落としたハンカチを拾ってくれたキョウイチ(春日和弘)とも、一瞬で恋に落ちた。しかし、これまた典型的なダメ男。ヒメコから金をせびり、ほかに女がいる気配もあるが、やたら調子だけはいい。そんな彼を、今までの男たちよりはマシ、と自己弁護を繰り返すヒメコ。
ヒメコには、揃いも揃ったダメンズの女友人たちがいる。たまに集まっては、ダメ男のストレスを、カラオケで晴らしていた。しかし、ヒメコには、もうひとつ捌け口があった。ネット見合いで知合った青年実業家のユウヤ(武内芳紀)だった。しかし、何のはずみか、あて馬だった彼が本命となり、ふたりは婚約。ユウヤは、ダメンズの仲間たちともどもヒメコを故郷の別荘へと招く。しかし、リナ(前田綾香)がジコチューな恋人タカオ(橋本恵一郎)を連れてきたことから、楽しいムードは一変してしまう。
いやー、盛りだくさんですねぇ。テンポも良く、まるでラブコメのカタログを見ていく楽しさがある。ひとりひとりのエピソードにきちんとした色合いが施されているのと、構成に澱みがないので、サクサクと物語に入っていけるのがいい。歌と踊りを挟むタイミングもなかなか上手く、場面転換もいい感じ。
主演の長谷をはじめとする女優陣がポップでカラフルな人間模様を描いているのも好きだけれど、いつの間にかククルカンを抜けていた橋本恵一郎がダークなキーパースンを演じていて、物語全体の芯になっている。タカオをめぐる中盤の事件でいったん出口を塞いでおいて、そこからクラシマックスへもっていく流れは、観客の意表をついてなかなか。
ただ、エピソードが盛りだくさんなのは魅力とはいえ、意味ありげなフメイ君やポチの話とかがややあっけなく、もう少し熟成が必要だったような気がする。勢いで許せるとはいうものの、もう少し細部を練り上げる根気があればさらに物語に磨きがかかる筈。
歌は、上手なカラオケの域を出ていないけど、劇中歌(ミュージカルというほど歌のウェイトは重くない)としての使い方には異論なし。しっかりと彼らの持ち味になっていると、わたしは思った。楽しく賑やかなアッパーさ加減が癖になりそうで、次もまた観たい。(115分)※11日まで。

■データ
そうか「うめたい」は「埋めたい」なのねの平日マチネ/中野ウエストエンドスタジオ
11・7〜11・11
作・演出/穂科エミ
出演/春日和弘、雅憐、長谷椿、今井清光、久保田勇一、古河亜妃、穂科エミ、岡戸三樹、日下ヨウ、武内芳紀、中島麻由子、中田豪一、野原由理、橋本恵一郎(カラクリ芸者)、前田綾香、和田良(クロカミショウネン18)
舞台監督/掛樋亮太 照明プラン/柳田充(Lepus) 照明操作/長尾祐介(Lepus) 音響/天野高志(OFFICE my on) 演出助手/久水広太 振付/久保田勇一×穂科エミ ヘアメイク/福田泉 宣伝美術・小道具/コハルビヨリ 衣装/静流×あこ×岡戸三樹