(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「生きてるものはいないのか」五反田団+演劇計画2007

演劇計画は、京都芸術センターの行っている演出家発掘・育成のためのプロジェクトで、その2007年版がこれ。五反田団の前田司郎がオーディションで集めた京都と東京の役者たちを使い、2年越しで作り上げた作品である。
大学とその付属病院が隣り合わせに立つ町が舞台。どうやら近くで、多くの死者が出た鉄道事故があったようで、病院は慌しい空気が漂っている。一方、学校では、今日も今日とて、暇な学生たちがのんべんだらりんとした時間を過ごしている。近所の喫茶店では、三角関係のもつれでもめている男女までいて。
そんな中、大学のキャンパスでサークルの仲間と喋っていた女子大生が、突然咳がとまらなくなり、発作を起こしたような状態で事切れてしまう。それをきっかけに、あっちでひとり、こっちでひとりと、人がバタバタ死んでいく。以前から大学病院の地下で米軍が密かに実験を行っている都市伝説があったが、どうやらそれはデマのようで、原因はまったく判らない。しかし、死は容赦なく広がり、たちまちのうちに、見渡す限り町は死体だらけになってしまう。
人は生まれた途端に死へ向かって歩み始めるとよく言われるけれども、もうすでにうん十年生きてしまった身にとっては、死はまったく他人事ではない。そんな死をめぐって、この作品で感心したのは、なぜ死んでいくのか、ではなく、どう死んでいくのか、にテーマの焦点が合わされているところだ。
人は、自らの死に直面したとき、どう死んでいくのかという問いかけに対し、17人の役者たちが17様の死にざまを見せてくれる。その中には、人生をちらりと垣間見せる死に方もあるけれども、今際のきわは総じてあっけない。死という現象も人が抱く重さと、現実の軽さのギャップが見事に浮き彫りにされている。
しかし、さらに一歩退いてこの作品を眺めると、世界の終わりというのは、こういう風にあっさりしたものかもしれない、という感慨に捉われたりもする。死と終末のイメージを重ね、見るものにあれこれ考えさせてくれる作品である。(110分)※12日まで。

■データ
死んだ役者さんたちがそのまま舞台上で寝てしまわないか心配だったソワレ/こまばアゴラ劇場
11・3〜11・12(東京公演)
作・演出/前田司郎
出演/浅井浩介、上田展壽(突劇金魚)、大山雄史、岡嶋秀昭、尾方宣久(MONO)、駒田大輔、鈴木正悟、立蔵葉子(青年団)、中村真生(青年団)、長沼久美子、新田あけみ、野津あおい、肥田知浩(劇団hako)、深見七菜子、松田裕一郎、宮部純子、森岡望、用松亮