(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「0.7+0.5≠1.0+0.2」ミナモザ第8回公演

ミナモザ(水面座)は、作・演出の瀬戸山美咲を中心に2001年旗揚げした演劇ユニットで、公演ごとに役者を募る形で過去7回の公演を行ってきたようだ。わたしは初見。今回(演目は、れんてんななたすれいてんごはいってんぜろたすれいてんににあらず、と読むようだ)、初日を目前に女優のひとりが降板するというアクシデントに見舞われたが、10x50KINGDOMの鈴木オルガが主役級の大役にピンチヒッターとして参加してことなきを得た模様。(舞台裏は大変だったろう)
心当たりのない招待状を受け取った七子(鈴木オルガ)は、雨の中、その美術館を訪ねて、みた。彼女を迎え入れた学芸員(穂積基紀)によれば、今晩は開設30周年の記念パーティだという。客は七子を入れてたったの4人。豪雨のせいか、停電で館内が暗くなった隙に、美術評論家の光璃(佐藤友美)が庭で死体となっているのを発見される。折からの雨で橋が流されてしまい、行動派の一瀬(木村桐子)、ひたすら怪しい眼帯の男権藤(本井博之)とともに、七子は屋敷に閉じ込められることに。
美術館の創設者は、かつて絵のモデルだった少女を殺し、自分の命も絶ったという。しかし、それから30年が経ち、惨劇が再び繰り返される、というホラー、サスペンス調の物語進行だ。美術評論家が殺され、一瀬が学芸員と姿を消し、やむなく怪しい権藤との道行きとなる前半から中盤にかけては、メリハリに欠ける展開で、正直退屈。挿入される過去も、どこか中途半端で、あまり生きてこない。
一方、主人公は、自分のことを自分で決められないという未熟さを抱えているが、それを克服するドラマとしてもやや未消化で、カタルシスに欠ける。最後の最後、過去の構図が逆転するシーンで、30年前のエピソードが蒸し返されて、ようやく舞台上に観客の目を引き付ける。次回以降は、クライマックスに至るまでの過程にどう緊張感をもたせていくかが課題だろう。
ただし、舞台装置は面白く、それを上手く使いこなしていたように思う。それと、直前のピンチヒッターとは思えない達者さでヒロインを演じた鈴木オルガが頑張り、役者間のチームワークも悪くなかった。まだまだ発展途上だが、次の機会にも観てみたいユニットだ。(100分)

■データ
トイレの故障、出入り口の水浸しは前日の台風のせいだろうかと思ったマチネ/新宿サンモールスタジオ
10・25〜10・28
作・演出/瀬戸山美咲
出演/木村桐子、鈴木オルガ(10x50KINGDOM)、穂積基紀、佐藤友美(シンクロ少女)、本井博之(コマツ企画)
照明/高橋昌子 音響/前田規寛 舞台美術/泉真 舞台監督/伊藤智史