(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「トワイライト王女〜孤独が中途半端で困る〜」天然スパイラル第12回公演

天然スパイラルは、作・演出も担当する金房実加が舞台芸術学院で同期だった仲間と始めた劇団GOGOケロンパ!を経て、2000年に結成。舞台に立つ6人全員が女性、しかもミュージカルを学んでおり、それを生かして、歌あり、踊りありのパフォーマンス性が高い演劇を上演しているらしい。MITAKA Next Selection 8th参加作品への参加となる本作は、予定の5公演ともがソールドアウトというから、すごい人気だ。
時代は不明だがおそらくは中世の終りごろ、ヨーロッパのとある王国が舞台である。女王となるための戴冠式を来年に控え、お姫様はまだのほほんとした宮廷ライフを送っている。そこにどこからとなく四人の魔女たちが宮廷に現れ、姫の吐息には毒が含まれていて、ため息をつくたびに人がひとりづつ死んでいく、というとんでもない話をのたまう。お姫様は、従者と小間使いをひきつれ、彼女にそんな呪いをかけたというひとりの魔女を探して、外の世界へと旅立つが。
三鷹ゲーセンの広い舞台空間をめいっぱいに使った大掛かりなセットに、きらびやかな衣裳。事態は深刻に陥らず、適度に歌と踊りを差し挟んで、恋と冒険の物語を大らかに展開していく。しかし、物語も終盤にさしかかった頃、物語を根底から引っくり返す秘密が明らかにされる。
いや、なんとか持ちこたえてきたわたしも、このオチに呆れたあたりで完全にギブアップしました、すみません。でも、これは、ほとんど夢オチと同じで、物語そのものを否定するに等しく、そこまでの展開を絵空事にしてしまう展開だと思う。この上っ面だけで、子ども騙しのツイストには、すっかり白けました。
それと、ファンタジックなお話を、明るく、溌剌と繰り広げる姿勢はポジティブで好感が持てるけれど、いかんせん、宝塚や商業ミュージカルのやや質の劣るコピーの域を出ないわけで、優等生の学芸会を見せられている空しさがある。本人たちがやっている楽しさは、理解できるのだけれど。演劇の次世代を担う云々という、MITAKA Next Selection の趣旨からも随分外れるような気がする。
この内容に2時間つきあわされて、幕がおりたときは、やれやれという気持ちでほっとしたが、客席の一部からは熱烈な反応もあって、カーテンコールは二度あった。前売りソールドアウトの人気とあわせて、いやはや、判らないものである。(120分)

■データ
あいにくの雨がどしゃぶりになったソワレ/三鷹芸術文化センター星のホール
MITAKA Next Selection 8th参加作品
10・18〜10・21
作・演出/金房実加
出演/千葉おもちゃ(マリッヂブルー)、甘城美典(劇団BLUES TAXI)、田山ゆき、梨澤慧以子、真白ふあり、武田佑子、浜本ゆたか(劇団ミルクホール)、高橋裕太(一回転半)、豊永伸一郎、武藤心平(7%竹)、中塚未乃、小此木まゆみ、竹内あすか、平島茜、丹羽あおい、金房実加