(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「楽園」モダンスイマーズ

これまでも再三書いたが、三鷹市芸術文化センター星のホールは、小劇場系の芝居には実に使い勝手が悪く出来ている。それに対して、さまざまなカンパニーが涙ぐましい工夫をしてきているが、今回のモダンスイマーズが見せた舞台装置はとりわけ秀逸だと思った。だだっ広く、すかすかに観えがちな空間を、そのまま廃屋の内部とし、上手上部から下手下部へと舞台正面を斜めに降りる階段を効果的に配置している。無駄な広さをまったく感じさせない作りにしているのが素晴らしい。
さて、お話は、この廃屋を秘密基地に見立て、自分達の遊び場にしている小学生たちの物語である。都会からこの田舎町に転校してきた瀬戸(古山憲太郎)は、ある日、クラスメートにこの廃屋へ呼び出される。どうやら苛めっ子の姫島(津村知与支)のガールフレンドである篠井(種子)から、ラブレターを貰ったことが原因らしい。貧乏な山上(小倉毅)と勉強が出来ない日下部(西條義将)を従え、篠井の目の前でねちねちと瀬戸に嫌がらせをする姫井。しかし、耐えかねた瀬戸は、山上と日下部を抱きこみ、逆襲に転じる。
先の舞台装置の素晴らしさにつけ加えるものがあるとするなら、それは大人が子どもの役を演じるというアイデアだろう。いや、もちろん、役者たちはそもそもが大人であるわけだが、彼らは大人(すなわちそれぞれの成人後)の姿で登場して、子どもを演じる。服装は、警察官だったり、プロレスラーだったり、髭をはやした者もいるのだが、登場人物の全員が小学生なのである。
わたしは足を痛そうに引き摺る種子の演技にすっかり騙された(あっぱれ!)が、ただ大人が子どもを演じる面白さに関して言えば、それが着想どまりなのが、もどかしい。それを活かす物語なりがあってこその着想なのに。字幕で、各人の過去と未来をオーバーラップさせるなどの仕掛けもあるが、借り物の域を出ていない。ただ小学生の喧嘩を見せられてもねぇ、という不完全燃焼感が強く残ってしまった。
この春のシアタートップス「回転する夜」の評判がよくて(わたしは未見)、ちょっと期待したモダンスイマーズだけれど、蓬莱竜太の作品はやはりベタで退屈。わたしとの相性はよくないことを再確認した舞台だった。(80分)

■データ
芝居のあとに大島酒場での一杯が楽しみな三鷹のマチネ/三鷹市文化芸術センター星のホール
MITAKA Next Selection 8th参加作品
10・5〜10・8
作・演出/蓬莱竜太
出演/古山憲太郎、津村知与支、小椋毅、西條義将、種子
美術/伊達 一成 音響/今西工 照明/松本由美(東京舞台照明)宣伝美術&衣裳協力/小原敏博 記録写真/Yoshizo Okamoto制作/神野和美