(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「穢れ知らず」空間ゼリーvol.9

ニチゲー演劇学科の女性たちを中心に構成される空間ゼリー。前回の「ゼリーな空間」は、女子高校のクラスひとつをまるごと描く作品で、平均年齢20歳という彼女らの感性がフルに発揮された舞台だった。今回は初の再演で、第4回公演の「穢レ知ラズ」をリメイクしたもの。
母親が家を去ったのは、子どもに見られてはいけないものを覗き見られてしまったから。その母から「自分と似ている」と言われた姉も出奔し、あとに残された弟はやがて家業を継ぐ。それから6年、父親は他界し、弟は叔父とともに家業の向上経営を切り盛りしている。気丈な次女、多感な年頃に差し掛かった双子の妹達を養っている弟。そこに、父親の葬式にも戻らなかった長姉が、ふらりと東京から帰ってきて。
再演するという自信が十分にうかがわれる代表作。恐るべき結末に向かって、サスペンスフルに物語が収束していくところが見どころだ。次女の肉親ゆえの反発や、かつてのクラスメートの親しさゆえの摩擦が、実に濃やかに描かれている。工場の従業員や居候の大学生などが秘めるさりげない悪意も切れ味鋭い。スタイルこそ違うけど、わたしはポツドールと同じテイストをこの作品から嗅ぎ取った。
長姉役の岡田あがさの色気は、もう尋常ではなく、弟までをも強烈に引き寄せる魔性の魅力に違和感はない。ただ、彼女がかかえる秘密を中盤あたりであまりちらつかせない方が、幕切れの衝撃は大かったのではないかと思った。
それと、民話とのシンクロニシティは、物語の生々しさを包み込む、柔らかなオブラートのようなものだと思うが、ラストシーンでマンガ昔話風の劇伴が高らかに鳴るのは、ちょっと。オブラートが厚くなりすぎて、興ざめになりかねないと思う。(100分)

■データ
宮原将護が熱演のあまり鼻血を出した台風のさなかのソワレ/ザムザ阿佐ヶ谷
8・31〜9・9
作/坪田文  演出/深寅芥
出演/岡田あがさ、下山夏子、佐藤けいこ、河野真衣、榎本万里子、 細田喜加、冬月ちき、猿田瑛、豊永純子、大内結(FLOS)、篁薫、 水谷一人、鈴木雄三、尾浜義男、宮原将護(Mademoiselle)
舞台美術/塚本好宏 舞台監督/笹浦暢大(うなぎ計画) 照明/稲崎愛歩 音響/筧良太(SoundCube)、竹下ヨシユキ(Lotus.) 宣伝美術/寺尾匠 宣伝写真/小峰あいか 照明監修/北寄崎嵩 制作/金沢仁(Artbiz)