(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「すけだち」FieLDS PRESENTS

鹿殺しの東京夏の陣第二弾はこれ。なんと、歌舞伎町のコマ劇場のアイドル芝居に、丸尾丸一郎と菜月チョビのコンビが脚本を提供するというもので、主演は松浦亜弥
謎の異星人たちの来訪は、危機的状況に陥っている自分達の星を救う救世主を求めてのことだった。地球に降り立った彼らは、さっそく目にとまっためちゃくちゃ強い女の子(松浦亜弥)とサムライ(筧利夫)に白羽の矢を立てるが、彼らはTVドラマ撮影中のアイドルと売れない役者だった。異星人たちの要請を、仕事と勘違いしたふたりは、彼らとともに地球をあとにする。
星に到着したふたりは、事の次第を知って驚愕するが、そうこうするうちに星の人々が直面する軍事政権による騒動に巻き込まれていく。逆境に立ったヒロインとサムライは、それぞれが抱える少女時代のトラウマと家庭の苦境を乗り越え、異星のレジスタンスたちとともに戦う決心をするが。
アイドルとしてはややとうの立った松浦亜弥だが、舞台のうえではさすがな動きと台詞で、筧とのツートップはそれなり。宮川大輔の悪役も堂々たるものだし、旬(らしい)のアイドル時東ぁみも、そこそこ見せ場を外さない達者さがある。そういう意味では、商業演劇としての最低水準はクリアしているに違いない。
しかし、小劇場系の観客として勝手なことを言わせてもらえば、上り坂にさしかかった劇団鹿殺しのふたりがかかわる芝居とあっては、そこからはみ出す何かがほしいところだ。正直、そういう思いは、ほぼ完璧に裏切られてしまった。
陳腐な筋書き、新感線の三番煎じくらいのアクションと、目を覆いたくなるような場面の連続で、命の尊厳をめぐる議論や親子の絆、父親不在のトラウマなどの裏テーマがようやく後半になって浮上するが、手遅れであるとともに中途半端。やたら派手な電光スクリーンと回転舞台を乱用する演出のせっそうのなさにも、白けてしまった。(80分+休憩20分+40分)

■データ
不気味なアイドルおたくがやたら多いソワレ/新宿コマ劇場
8・5〜8・14
作/丸尾丸一郎・菜月チョビ(劇団鹿殺し) 演出/岡村俊一
出演/筧利夫松浦亜弥北村有起哉宮川大輔、富岡晃一郎、森山栄治大口兼悟時東ぁみ青谷優衣三浦涼介、鷲尾昇、篠田光亮、青柳塁斗、Takuya、成清正紀、中川真吾、たくませいこ、ギャル曽根2丁拳銃、他
音楽/つんく♂