(その後の) a piece of cake !

今宵、すべての劇場で。

「ヤバ口さんちのツトム君!」拙者ムニエル灼熱の夏休み2007

拙者ムニエルを初めて観たのは、2005年9月の「FUTURE OR NO FUTURE」(@シアタートップス)のことで、それ以降足を運んでいないけれど、猥雑な面白さは好きだし、役者の中に面白い人材も目だって、機会さえあればまた、と緩く構えてました。しかし、一変して、今回の公演は何がなんでも、と決めたのは、今年4月の「天国と地獄」で、澤田育子という女優を知ってしまったからである。(「FUTURE OR NO FUTURE」には、たまたま出ていなかったんだね、彼女)
演劇キックプロデュースの「天国と地獄」は、見どころも多く、客演陣にも達者な役者が揃っていた中で、町田マリーとタメを張ってたのがこの人澤田嬢。いやはや、その強烈な存在感は、周囲ばかりか客席をも圧する勢いがあって、それまでの不明を悔やむとともに、今年は一回きりという所属劇団の本公演を待ち焦がれておりました。
さて、お話は、少年時代から兄(村上大樹)に騙され続けてきたお陰で、変なことばかり口にする「ヤバ口」と綽名を付けられた少年(加藤啓)が主人公。社会に適応できない彼は、バイトすら3日もたない情けなさで、そういう人々が集まる矯正施設で暮らしている。山中にあるこの施設をはるばる訪ねてきたミズエ(澤田育子)も、恋人のガンちゃん(千代田信一)ともども、バイトが続かない根気なさを改めよう、というのが動機。しかし、矯正施設とは名ばかりで、コミューンのような気ままで温い毎日が彼らを待ちうけていた。
お話は、後半、イカ人間の侵略とか、ありえない展開が出てきて笑わせるが、どことなくおとなしめの印象。その原因は、中盤に施設の中で繰り広げられる恋愛模様の甘酸っぱさが、奇妙奇天烈な展開を中和しているからだろうか。
その色恋沙汰の中心にいるのは、勿論澤田嬢演じるミズエで、さりげないモテキャラぶりは、時に叙情すら漂う。そのあたりのホンワカな空気を、おそらくはぶっ壊したいのだろう、後半は人格障害などを持ち出して、ミズエの役どころを汚そうとするのだが、そんなオーダーをも軽く呑みこんでしまう堂々たるヒロインぶりだ。
澤田嬢のいなかった「FUTURE OR NO FUTURE」よりはこじんまりとまとまってしまっているが、劇団のメンバーで統一したキャスティングも良し、ひとりひとりの役者たちも充実した芝居を見せていると思う。贔屓の澤田嬢の堂々たる芝居ぶりの片鱗をのぞかせてもらうに十分な楽しい舞台でした。(120分)※8月6日まで。

■データ
座席配置もゆったりで寛げたソワレ/下北沢駅前劇場
7・21〜8・6
作・演出/村上大樹 
出演/加藤啓、千代田信一、澤田育子、伊藤修子、成田さほ子、山岸拓生、寺部智英、石川ユリコ、林屋聖子、溜口佑太朗村上大樹